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「……おーい、遠山ー。幼馴染がケーキ回収に来てるぞー」
「…………」
机の表面と仲良くしていると、頭上から斉藤に声を掛けられて目を開けた。
体勢を立て直して顔を上げる。感情っ気のない顔で人の前に突っ立っているユウヒの姿がそこにあった。
ようやく立っている感じだ。見るからに眠そう。
「早かったな。昼ごろ来ると思ってた」
「……腹減った」
「…………」
まともな会話の一つもしろよテメエ。
俺の言葉なんてガン無視で、ユウヒは腹を押さえて俺を見下ろしてくる。
さっき隣の家にユウヒを迎えに行ったら当然のように夢の中だった。
起こしたってどうせ起きないし、一人で先に家を出てきた。
だから今日も昼頃にようやくタラタラやって来て、学校で最初にする事と言えばケーキを頬張ることだろう。
そう思っていたのだが、意外にもホームルームに間に合ったようだ。
着ている制服は非常にだらしない。
半分寝たまま着替えてきたに違いない。パジャマで外をウロウロしないだけまだマシか。
やむを得ず腰を上げ、ユウヒの曲がったネクタイに手をかけた。
「お前、もっとちゃんとしとけよ。こんな格好でフラフラしてるから変な奴らに絡まれるんだろ」
「アキラだってひどいもんだよね」
「うるせえなッ、俺のこれはファッションでやってんの!」
「ケーキ……」
「今やるからちょっとくらい会話続けろッ!」
俺との会話になんてすぐに飽きる。こいつの目的はハナからケーキ。
ヨレっとした制服を直されていようが、俺がどんな理由でどんな格好をしていようが、興味の対象には一切ならない。
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