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現時点で役に立っていないベルトの長さを腰周りに合わせ、調節してつけ直している最中もユウヒはまるで他人事。
ぼーっと突っ立っているこいつが何を考えているかなど俺には分かりようもないけど、おそらくはケーキ食いてえとか思っているのだろう。ふざけろ。
ユウヒの腰から手を離し、漏れてくるのは疲れ切った溜息だけだ。
「ほら、できた。自分でやれよこういうの」
「めんどくさい。ケーキ」
「一瞬でいいからケーキから離れろ」
そういう俺も、ユウヒの服装を整え終わると自然と体が動いている。
これぞまさに下僕の習性。向かう先はケーキの箱をぶっ込んであるロッカーだ。
廊下へと足を進めた俺の目的をいち早く察知したユウヒもテクテクと人の後を付いて来る。
一見すれば可愛いマスコットに見えなくもない。だがその中身は傍若無人な女王様。
そもそもこいつは生まれる前から母親の腹の中で策略を練っていたんじゃないのか。
それくらいは疑いたくもなる。こんな性格破綻者だろうとフニャッと許されてしまうのは、ユウヒがユウヒであるからに他ならない。
細っこくて色白で、常にボーっとしていて必要最低限しか喋らない。
普通なら男としてそれってどうよって思われるところだろうが、こいつの場合はそうならない。
まあいいか。可愛いし。そんな正反対の解釈をされる。
と言うのも、なんでかこいつは本当に可愛い。
珍獣的な要素の可愛さが全開で放出されている。
俺だってこいつの事をうっかり可愛いなんて思いさえしなければ、ここまで屈辱的な扱をされてる状況にはならなかった。
逆らえないのはユウヒだから。この可愛さがなければ許していない。
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