第12話 救出

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第12話 救出

「「ええ?レーシャ王女戻っていないんですか?」」 レーシャ王女が城に帰って来ていないらしい。 やばくないか? 「誘拐されたのか?」 王女様だしありえるのかも。 「トワ様、お手紙が来ておりますが・・」 メイドさんから渡される。 手紙? 嫌な予感がして直ぐに封を切った。 「トワへ少女は預かっている。一人で東側一番奥の倉庫へ来い」 僕は手紙の内容を音読した。 どうやら倉庫に捕らわれているようだ。 「今から行ってくるよ。ウェンディは待ってて」 「一人で行くの?誰か連れて行ったほうが・・」 「多分、僕の知っている人だから大丈夫・・手紙は王様に渡しておいて」 「わかったわ。気を付けてね」 手紙はウェンディに預けて、僕はレーシャが捕らわれていると思われる倉庫へ向かった。 倉庫は今の時期は使われていない場所らしい。 無人で錆びれた場所。 ギィー ドアを開ける。 中は埃っぽい。 暗い所に二人の人と縛られている女性。 「よく来たな。じゃ、ちょっと殴られろや」 一人の男が僕に向かってきたが、こんな狭いところで魔法を使う訳にも行かない。 すかさず男の腹に蹴りを入れた。 「うっ!」 攻撃されると思っていなかったのか、ゴロゴロと転がる。 意外と弱いな。 「こっちは・・女の子に傷つけたら・・可哀そうだよなぁ」 ナイフがレーシャ王女の頬に当てられる。 「ば、今何をしているのか分かってんのか??監獄行きだぞ?」 近くまで来て顔を見たら、やっぱり兄たちだった。 手紙の筆跡に見覚えがあったからね。 レーシャ王女の隣にはシキ兄、転がっているのはロイド兄だ。 「そんな脅しきかねぇよ」 『風よ・・』 僕は埃っぽい室内を利用することにして、風を魔法で作りだした。 自分の周りは風で囲い埃を巻き上げる。 「何だ、この風・・目が開けられん」 予想通り、シキ兄は両目を瞑っている。 その間に、僕はシキ兄に跨り、ナイフを奪い取り床に投げた。 「「そこまでだ!両手を上げろ!」」 外から声がして、駆け付けた城の兵士たちがシキとロイドを捕まえる。 王様が手配してくれたのだろう。 僕はレーシャ王女の縄を解いた。 「居なくなった事に直ぐに気が付かなくてごめんなさい。怖かったでしょう?」 「トワ・・さま・・こわかった・・」 レーシャ王女は震えていて、しばらく泣いていた。 落ち着くまでしばらく待った。 王女って言っても普通の女の子だもんな。 怖いものは怖いだろう。 僕は彼女の頭を優しく撫でていた。 「来てくれて・・ありがとうございます・・」 兄たちは王女誘拐で牢屋に入る事になった。 一番上の兄が城に勤めていたのだが、責任を感じて退職するという。 これ、家とか大丈夫なのか? 爵位没収とかにならなければ良いけど・・。 「とーわー様っ!」 城の廊下で歩いている僕に、レーシャ王女が抱きついてきた。 ウェンディが見かねてレーシャ王女を引きはがす。 そんなやり取りがここ数日繰り広げられていた。 「随分好かれたみたいね」 「はぁ~」 「どうすんのあれ」 「どうするって言われてもなぁ」 王女様だし、どうしたらいいのだろう。 そう思っていたら。 王様に呼ばれた。 城の中で幾度となくレーシャ王女に抱きつかれているのは皆が知るところとなっていた。 もちろん王様が知らない訳もない。 玉座の間ではなく、違う部屋に呼ばれた。 コンコンコン。 「失礼します」 緊張しながらドアを開けると、机で事務仕事をしている王様の姿があった。 玉座の時に見た姿ではなくて割とラフな服を着ていた。 大量の書類が机に置いてあって、書類に書き込んでいるようだ。 「すまんな。そこのソファに適当に座っていてくれ」 しばらくして、ひと段落したのか王様がソファの対面に座った。 「レーシャの事なのだが・・トワ殿はどう思っている?」 「どう・・とは好きとかそういう事でしょうか」 「そういう事だ。嫌いならはっきり言ってくれて構わない。だからと言って、対応を変えることも無い」 「嫌いではないです。どちらかというと好きですけど」 「ならば問題は無い。付き合ってやってもらえるか?」 「・・あの、僕には恋人がいるのですが?」 王様は首を傾げている。 「何を言っておる。何人いても結婚はできよう。おかしなことを言うものだ」 あれ?僕が変なのかな?? 「少なくともゼノベア王国では一人でも二人でもいいのだが?好きなだけ一緒になればいい。もちろん男とか女とか関係なくだ」 あれ?この世界は夫婦の概念が違うのかな? そういえばここは異世界だった。 日本ではない。 僕の両親が普通だったから疑問にも思わなかったけど。 「何もおかしなことではないぞ?トワ殿は・・貴族でも珍しい事ではない。経済力の問題もあるから100人という訳にもいかないだろうが」 100人って・・頭がおかしくなってきた。 「とにかく、ウェンディの意見を聞かないと決められません」 僕はそう言って早々に部屋を退出した。 ** 「好きにすればいいわよ。私はそばに居られるだけでいいの」 部屋に戻ったら、ウェンディが待っていた。 ウェンディが良いのなら、別に良いのか。 ソファに座り、いまいち腑に落ちないままぼーっとしていると彼女がキスをしてきた。 「ちょっ!」 驚いて顔が熱くなった。 「私が大好きなのはトワだけなんだからね。本当は誰にも渡したくないんだから」 拗ねた表情も可愛くて、僕は彼女を抱き寄せていた。
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