第13話 三人の関係と兄との魔法戦

1/1

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ

第13話 三人の関係と兄との魔法戦

ザワザワ・・。 城内が騒がしい。 僕たちの事を噂しているのだろう。 城の廊下を歩いていると、とにかく目立つ。 僕の左にウェンディ、右にレーシャ王女。 三人横に並んで歩いていた。 「結局付き合う事になったのか」 通りかかったアスマに言われる。 「二人と付き合えるなんて、ラッキーって思っておけば良いんじゃね?正直羨ましいぜ」 僕の心中を察したのか、そんなセリフを残しアスマは去って行った。 *****アスマ視点 「あのさあ、あれで言いわけ?」 勇者パーティ仲間のユウリが俺に問いかける。 先ほどすれ違ったトワたちの事を言っているのだろう。 「ハーレム作っちゃってさ。これから魔王と戦おうって時によ?」 「まだ、戦う時期が決まったわけじゃない。それにあんなカップルは普通だろ?何を怒っているんだ?」 俺もこの世界の婚姻事情を聞いて最初の頃は驚いていたな。 もっとも、相手が居ないからどうしようもないのだけど。 ああ、そうか。 「ユウリ、俺と付き合ってみるか?」 「な、何バカなことを言ってんのよ・・」 年頃のユウリはトワたちが気になっているのかもしれない。 顔を赤くした赤い髪の少女はそっぽを向いていた。 *****レーシャ視点 少し前――――。 誘拐されて、わたくしは今までにないくらい怖い思いをしました。 トワ様が気になって、仕方なかったわたくしはずっと彼の後を追いかけていました。 その時は都に居て、ふと誰かに声をかけられて・・(さら)われてしまいました。 うかつでした。 その時は自分の立場をすっかり忘れていたのかもしれません。 今まではアスマと一緒だったから守られていたのです。 目も口も塞がれて何も見えませんでした。 声がして、トワ様が助けに来てくれたと分かりました。 攫った男が言いました。 「こっちは・・女の子に傷つけたら・・可哀そうだよなぁ」 冷たく鋭利な固い物・・恐らくナイフがわたくしの頬に当たっているようです。 「ば、今何をしているのか分かってんのか??監獄行きだぞ?」 トワ様の慌てた声、男たちを心配しているようでした。 その後、どうにかなったのか縄が解かれてわたくしは解放されました。 わたくしは安堵のあまりしばらく泣いてしまいましたが。 城に帰り気が付けば、トワ様の事ばかり考えるようになってしまいました。 これが好きと言う感情なのでしょうか? トワ様はウェンディと一緒ですが構いません。 わたくしはトワ様に抱きつきます。 不思議と気持ちがほっこりして温かくなります。 そのたびにウェンディに引きはがされましたけど。 そうこうしているうちに、トワ様から訊かれました。 「僕の事が好きなのかな?」 ちょっと困った顔をして聞かれましたが 「はい」 と答えました。 「僕も好きだから・・一緒にいると良いよ」 照れて言うトワ様。 思わぬ言葉に嬉しくてまた抱きついていました。 どうやら、わたくしと恋人になっても良いと思ってくださったようです。 ウェンディは拗ねていましたけど。 「その代わり、二人仲良くしてほしいな」 それでも、トワ様の言葉は実行できるか自信がありませんけどね。 *****カイ視点(トワの一番上の兄) 「ここを辞める前にトワと模擬戦をさせて下さい」 わたしはカイ・ウィンザー、城で宮廷魔導士として働いていた。 歳の離れたカイとは容姿があまり似ていない。 金髪と青い瞳が同じくらいだ。 昔から病弱で色白で体も細い。 「そうか・・良いだろう。ただし危ないから屋外ならば許そう・・カイ殿は勇者だな・・」 王様が何故かかなり驚いていた。 最後の言った言葉もよく分からない。 とにかく許可は取った。 わたしはトワとは年が離れすぎていてほとんど話したことが無かった。 噂では勇者との模擬戦が凄かったらしいと聞いたのだが、その日は用事があり見れなかったのだ。 是非一度見てみたかったのだ。 「実家から追い出されたことも全く知らなかったな・・」 会うのは数年ぶりだ。 実家にもしばらく帰っていない。 城からだいぶ離れた草原にわたしとトワは向かい合っていた。 「嬉しいよ。会うのは何年ぶりだ?」 「そうだね。僕がまだ小さい頃以来だよね」 わたしは杖を構える。 トワは杖は持っていないのか? 「杖は使わないのか?」 「そっか、普通は使うんだよね。僕は特に必要無いかも」 『光の精霊よ・・我の周囲を保護せよ『障壁魔法(バリヤー)』』 トワは右手を上にかざし詠唱する。 それだけで魔法が発動するのか。 わたしは何年も修行して宮廷魔導士になったというのに。 *****トワ視点 今日一番上の兄のカイが模擬戦をしたいと言い出したらしい。 カイは年が離れているだけあって、ほとんど話したことが無い。 城での噂を聞いて、魔法を見たいと思ったのだろうか。 前回の勇者との対決を見なかったらしい。 「嬉しいよ。会うのは何年ぶりだ?」 兄が本当に嬉しそうに微笑んでいる。 「そうだね。僕がまだ小さい頃以来だよね」 「杖は使わないのか?」 「そっか、普通は使うんだよね。僕は特に必要無いかも」 杖は魔法を増幅させる力があるらしい。 僕はあまり気にしていなかったのだけど。 『光の精霊よ・・我の周囲を保護せよ『障壁魔法(バリヤー)』』 僕とカイ兄さんの周りをバリヤーで囲む。 前回、勇者が魔法を使った時危なかったからね。 流石に兄さんなら危険な魔法は使わないだろうけど。 離れた所に、ウェンディとレーシャ王女・・王様や勇者たちも見ている。 「トワは優しいな」 『ファイヤーボール』 カイ兄さんが炎魔法を放った。 『水の精霊よ・・水の壁(ウォーターウォール)』 すかさず火を水で相殺する。 ドドドーン 空中で爆発が起こった。 同じ質量なら相殺されるはずだから、僕が調節できないのが問題かもしれない。 魔法も強ければいいという訳ではない。 今後の課題だな。 じゃあ、次は僕が行くか。 『土の精霊よ・・『ストーンバレット』』 土の塊が円錐状になってカイに飛んでいく。 『水の壁(ウォーターウォール)』 カイは水の魔法を操り壁を作る。 土の塊が、水の壁に当たって溶けていく。 えっと、次は何の魔法を使おうか? 「ところで、トワの魔力量はどのくらいあるんだ?」 急に訊かれて、僕はステータスを見た。 ----------------------------------------------------------- トワ・ウィンザー 15歳 魔法使い 生命力 800/800 魔力  990/1000 攻撃力 250 守備力 100 素早さ 100 スキル 火魔法・水魔法・風魔法・土魔法・光魔法・闇魔法 --------------------------------------------------------------- 「えっと、1000かな?」 「「「い、一千だと!?」」わたし自身が確か300くらいと聞いていたが、三倍強とは・・」 「ま、まいった」 カイ兄さんが降参してしまった。 「とても、勝てる気がしないよ・・」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加