第16話 ドラゴン討伐と神域

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第16話 ドラゴン討伐と神域

*****王城にて 「「レッドドラゴンだと?!」」 王城の玉座の間でわしは叫んでいた。 通信用のペンダントを使い、レーシャと連絡を取り合っていたのだ。 城内がざわついた。 「ほ、本当ですか?そのような危険な所へレーシャは・・」 王妃がおろおろしている。 「落ち着け、一人でいるのではない・・他にも勇者たちがおるのだから」 「そうでしたね・・無事に帰ってくるといいのですが・・」 他の者も声は出さないが不安に感じているだろう。 王都にレッドドラゴンが出るのは恐らく初めてではないか。 最悪、国が滅ぼされかねない。 (どうか、無事でいてくれ) わしにはただ祈るしかなかった。 *****ウェンディ視点 トワとアスマさんはレッドドラゴンに向かい飛び立った。 火が燃え盛り、気温が上がって暑くなっていた。 煙も上がっている。 私は水魔法で辺りの火を消火し始めた。 レッドドラゴンの火力は半端なくて気休め程度にしかならないけど。 レーシャ王女は怪我をした人を回復魔法で治療している。 ゴダイと、ユウリは一緒に動いて残っている魔物を討伐するようだ。 *****アスマ視点 俺とトワは風魔法を使い飛行している。 とはいえ俺もあまり飛行時間が長く持たない。 早めに決着付けないと。 トワを見ると余裕そうだ。 初めてのドラゴン討伐だと思うのだが怖くは無いのだろうか。 「うわっ」 レッドドラゴンは火を吐いてきた。 慌てて、火を躱す。 「やべっ」 下の街が焼かれてしまったかもしれない。 あれ?焼けてない? 透明な何かが、街を守っているみたいだ。 「いつの間に防御魔法で街を覆っていたんだ」 気を取り直し、剣を握る。 今は目の前のレッドドラゴンに集中しないと。 *****トワ視点 うわああっ!レッドドラゴンだ! 僕は恐怖より好奇心が勝っていた。 マジカッコいい! そんなこと思ってちゃいけないのだろうけど。 異世界来て良かったと思った。 「攻撃しないと・・えっと火だから弱点は水かな?」 あっ!僕は閃いた。 僕はマジックバックから水石を取り出す。 石と、魔法を同時に使ったらどうなるのだろう。 『水よ・・』『水の精霊よ・・『水の滝(ウォーターフォール)』』 水色の石を手で包み込んで、同時に水魔法で滝を作り出す。 大量の水が、ドラゴンを包み込んだ。 ドラゴンは苦しそうに暴れている。 どうやら弱点だったみたいだ。 アスマがその隙にドラゴンの頭を狙うが、苦戦をしているように見えた。 「「皮膚が硬くて通らん!トワ何とかならんか」」 アスマが叫んでいた。 「アスマ雷出せるか?水の中に落とすんだ」 「雷?ああ、出来るが・・」 「やってくれ」 アスマは雷の魔法を発動させた。 空に暗雲が立ち込める。 稲妻が水中に落ちた。 「「ドドドドドドーーーーン」」 思惑どおり、ドラゴンは気絶し水中に没した。 感電死したのかもしれない。 「多分、大丈夫だと思うよ。もう死んだかも」 「え?マジか・・」 アスマはドラゴンを見ていたが、反応が無いのを確認すると安心したようだ。 「今回は死ぬかと思ったぜ・・・」 「あははは・・・」 僕たちはゆっくりと地上に降り立った。 「はぁ、今回はヤバかったな」 アスマが言った。 幸いにも魔物はレッドドラゴンを倒したあたりから何処かへ行ってしまった。 ボスモンスターだったのだろうか? 「ああ、早くお城に帰りたい・・お風呂入りたい」 レーシャも頑張っていたようだった。 「本当よね。トワが居なかったらヤバかったわ。感謝しなくちゃね」 ユウリがホッと一息ついている。 僕は魔物がしていた首輪が気になり、レッドドラゴンの遺体に近づいていた。 「トワ?」 その様子をウェンディが心配そうに見ていた。 何故か無性に気になる。 僕は首輪に触れてみた。 辺りが光に包まれたかと思うと、何処か違う場所へ転移したようだった。 「ここは?」 『あらあら、珍しいお客様だこと』 神殿のような真っ白い建物。 そこには金髪のロングヘアーの美女がソファに足を組んで座っていた。 真っ青な瞳で僕を見つめる。 布を巻いただけの服で胸元が大きく見える。 まるで、心の中まで見透かされているようだった。 『まさか、レッドドラゴンを倒すなんて意外だったわ。人間にしては良くやったわね』 美女がパチパチと手を叩いている。 『あら、わたし褒めたのだけど気にいらなかったのかしら?』 「ここは、どこですか?」 『ああ、ここは神域・・神の領域よ。ここに来る人間は珍しいわね』 「神様?」 『貴方たちの言う女神、アイリーンかしらね』 教会で言われている神様は、慈悲深く慈愛に満ちていると言われている。 目の前の女性は・・何か違うような気がした。 見下しているような感じだ。 『そうね。わたしは人間の言う慈悲深いって感じじゃないわ。もっと人間臭いかもしれないわね。勇者召喚したのもわたしよ。勇者だけだったら、ドラゴンは手に余ったかもしれないわね』 「勇者を召喚して、魔王を倒すのが目的ですか?」 『ん~ちょっと違うかな。わたしは人と魔物の争い・・争っているのを見るのが好きなの。何しろ平和だと見ていて退屈でしょうがないじゃない?』 え・・? 退屈だから召喚したのか? 暇だから争わせるって・・。 『驚かしちゃったわね。人なんてね、わざと何かしない限り争わないものなのよ。戦争も・・わざと起こしてるってわけ』 「・・・ふ・・ざけるな!今回の事だって、犠牲になった人が何人いると思ってるんだ!!」 僕は怒りで肩が震えていた。 目の前の人が神様だろうが、殴りたい衝動にかられていた。 『わぁ、おっかない。ここは貴方の居る場所じゃないからさっさと退散してもらいましょうか・・ついでに記憶も消しとかないとね』 次の瞬間、足元に穴が開き、真っ暗い空間に落とされていった。
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