第2話 冒険者ギルド

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第2話 冒険者ギルド

彼女が部屋を訪ねて来た。 僕と彼女はお互い自己紹介をする。 彼女の名前はウェンディと言うらしい。 ベッドに並んで腰かけた。 「えっ?家を・・追い出されたの?それは・・辛かったわね・・辛いのは本人じゃなければ解らないだろうけど・・」 僕は家を追い出された経緯とかを話していた。 誰かに聞いてほしかったのかもしれない。 「だ、大丈夫ですよ」 自分に言い聞かせているみたいだ。 本当は大丈夫じゃないらしい。 動揺を抑えないと。 僕の頭に、ウェンディさんの手が触れて、優しく撫でられる。 「え?」 「辛かったら泣いてもいいのよ?」 穏やかな優しい声。 ふと、瞳から雫が溢れ出ていた。 「あ、あれ?」 (泣くつもりは全く無かったんだけど) ぶわっと胸の奥から熱いものが込み上げてくる。 「ううううっ・・・」 僕はしばらくウェンディさんの胸で泣いてしまっていた。 翌日、僕はウェンディさんの部屋に来ていた。 「昨日はすみませんでした」 「気にしないでね。泣いてすっきりしたでしょ?」 そう言われてみれば気持ちが軽くなった気がする。 あれから、僕はしばらくウェンディさんの胸で小一時間くらいだろうか泣いていた。 彼女は何も言わず、ずっと僕の頭を撫でてくれていた。 「トワくん弟みたいでかわいいし・・それと、良かったら名前呼び捨てで呼んでもらえないかな?私も呼び捨てにするわ。その方が気が楽でしょ?」 そう言って、ウェンディさんは微笑んでいる。 僕、弟なんだ。 ウェンディさんは20歳で僕は15歳。 年齢的に姉弟くらいが丁度良いのか。 「今日はさ、冒険者ギルド行ってみない?登録するんでしょ。連れて行ってあげる」 冒険者ギルドには、沢山の人が居た。 剣士とか、魔法使いとか獣人とか色々だ。 「ほら入って」 放心している僕をウェンディさんが促す。 「う、うん」 「登録はね、そこを真っすぐ行ったところよ。分かる?私はそこで何か飲んでいるから、頑張って行ってらっしゃい」 彼女に手を振って見送られる。 言われた場所へ行くと、登録受付の看板があって制服を着た女性のギルド職員がカウンターに座っていた。 「登録ですか?」 「はい」 紙を渡され、必要事項を記入していく。 「名前・・と、魔法は使えないから書かなくていいか」 「はい。承りました。魔法はいいのですか?」 「僕、魔法無しなのでこれで」 ざわっと、一瞬ギルド内が騒めいた気がした。 「おお!無事に登録してきたね。偉い偉い」 ウェンディさんに頭を撫でられていた。 僕、ずーっとこんな感じなのだろうか。 ちょっと恥ずかしい。 「ギルドはいつの間に託児所になったんだ?」 上半身裸で筋肉質の男、戦士っぽい人が僕に声をかけてきた。 絡まれたっぽい。 何て返したらいいのだろうか。 僕が迷っていると。 バシャ! 男の顔に水がかけられた。 「え?」 あれ?今、水をかけたのはウェンディさんだよね? よく見ると、少し顔が赤くなっているようでお酒を飲んでいたみたいだ。 「な、なにしやがる~~」 「手が滑っちゃった~私の弟に絡まないでくれる~?」 ウェンディさんが男を睨んでいる。 「おいおい、喧嘩か?」 「女が水を・・」 ザワザワ・・ ギルド内が騒然としている。 「騒がしいな・・一体何があった?」 カウンターの奥から、低い男の不機嫌そうな声が響いていた。 「お前ら、ここで何をしてたんだ?争いは禁じているはずだが・・」 眼光鋭い男が言葉をかける。 180センチ位の長身の銀髪で、顎髭(あごひげ)を生やしている。 「「ガーレンギルド長?」」 ウェンディは驚いて声を上げ顔が青くなっていた。 絡んでいた冒険者も同様の様で・・。 「「「すみませんでした!」」」 僕とウェンディ、絡んできた男はギルド長に土下座をして謝っていた。 「絡みたくなる気持ちは分からないでもないが・・ガイこれで何度目だ?」 ガイと呼ばれた男は、体を縮こまらせていた。 「トワと言ったか。なんと言うか、気にしないでくれ。ギルド(ここ)ではいつものことだからな」 「すみません、気を付けます」 ウェンディは、ギルド長に深々と頭を下げていた。 「さっきはすまなかったな。俺も機嫌が悪かったせいで・・」 ギルドの食堂の椅子に腰を掛けていると、ガイは僕とウェンディに謝ってきた。 実際水をかけられて被害を被ったのはガイの方なのだけど。 「そういえば、たまたま聞いちまったんだけどよ・・お前、魔力無しって本当か?」 僕は(うなず)いた。 「お詫びの印ってほどでもねえが、これやるよ」 ガイは赤い石を僕に手渡す。 赤い石は透き通っていて、重みがある不思議な感じのする石だ。 「これは火の魔法が使える石だ。少々コツがいるが、ファイヤーボール程度にはなるだろう。冒険者になれば魔法の一つも使えたほうが良いからな」 「え?良いんですか?もしかして高いんじゃ・・」 「気にすんな余ってたからやるよ。俺には必要無いし、貰ったものだしな」 ガイって意外と良い人だったみたいだ。 「有難うございます。とっても助かります」 これで魔法が使えるようになるかもしれない。 「わぁ、これ魔石だねえ。しかも炎石(えんせき)だ。赤いドラゴンが死んだ後に出現する石って言われていてね。すっごく貴重な物だよ。トワ良かったね」 赤いドラゴンか・・凄いな。 「私、丁度パートナーが欲しかったんだよね。トワ、私とパーティ組まない?」 「ウェンディいいの?僕まだ初心者なのに・・」 正直一人だと心もとなかったので正直助かる。 初めての事が多くて、戸惑う事も多いだろうし。 まだスライムしか倒したこと無いしね。 「あ、そういえば・・」 スライムと言えば思い出した。 スライム倒したら石が出て来たんだっけ。 「この石・・」 僕はリュックの中から、スライムを倒した時に落ちていた青い石を取り出しウェンディに見せた。 「スライムの魔石ね。受付に持って行けばお金になるわよ」 やったラッキー。 心もとなかったお金が増えるのは嬉しい。 僕は早速受付に行って換金をしてくる。 スライム10匹で金貨一枚になった。
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