45人が本棚に入れています
本棚に追加
第40話 エミリア学校へ行く
「エミリアも学校に行く~」
「「ええええ?」」
一週間様子を見ていたが、エミリアはしばらく経っても元に戻らなかった。
「学校って遊びじゃないんだぞ?」
アルトがたしなめる。
「でも、家に居ても暇だし・・お兄ちゃん!一緒に行きたい!」
エミリアはアルトに抱きついた。
「わぁ、お前やめろって・・」
アルトは狼狽えていた。
「うふふ。かわいい」
エミリアはアルトより身長が高くて170センチくらいだろうか。
アルトはまだ成長期で150センチほど。
アルトは完全に妹に揶揄われていた。
兄の反応が面白くて仕方がないようだ。
「どちらにしても、学校には通わせるつもりだったし・・頼んでみるか」
僕は学校長にお願いすることにした。
*****アルト視点
教室の黒板の前に立つ、マイア先生とエミリア。
「今日からこのクラスに入る事になりました。エミリア・ウィンザーさんです」
マイア先生からクラスの皆へ紹介される。
「エミリアです。よろしく!」
エミリアは笑顔で元気いっぱい挨拶をした。
「あの・・あの方ウィンザーって仰ってますが、アルト君の親族の方なのかしら?」
隣のブリアンナさんが、眉をひそめてぼくに耳打ちしていた。
「あ~ブリアンナさんには言っても良いかな?あれ、妹のエミリアなんだよね・・内緒だけど。一応従妹という事でお願いします」
「「えええっ?」」
「あ、ごめん。つい名前呼びしちゃった。気分悪いよね。親しくもないのに」
「え?そういえば・・わたしもアルト君って言っちゃいました。これからはそう呼んでも良いですか?わたしは名前呼びしても全然構いませんので」
「う、うん」
ぼくは急に恥ずかしくなった。
「妹さん?なのですか?でも以前見た時は姿が小さかったような・・」
「特異体質なんだろうね?急に大きくなっちゃってさ・・」
エミリアはぼくと同じクラスにしたらしい。
本人が不安がっているのと、何かあった時はぼくが助けられるからだ。
魔法学校は基本年齢制限がないから、エミリアみたいな年上?でも問題はないみたいだ。
元々来年には入学する予定だったらしいし。
「おい、アルトお前の親族か?」
ニルスが話しかけてきた。
さーてどうしようか。
「従妹のエミリアだよ。学校は初めてみたいだから優しくしてやってよ」
「へえ~そうなんだ。可愛いし、お近づきになれないかな」
あれ?あんな事言ってるし。
エミリアは姿はああだけど、中身は変わって無いからな気を付けてあげないとな。
「エミリアさん♪」
早速エミリアの周りには男子が取り囲んでいた。
少し大人?な女子が来て浮かれているようだった。
「ねえねえ、彼氏とかいるの?」
「趣味とか何?」
「お家はどこら辺?」
矢継ぎ早に質問されているみたいだな。
本人は・・アワアワしているみたいだ。
「ぼくの従妹なんで、お手柔らかにお願いしますね」
エミリアの近くに行ってフォローする。
「ちっ!出てくんなよ。アルト」
「お前、女子から人気あるんだからエミリアさんから手を引けよ」
「そうだそうだ!」
途端に男子たちの発言が変わった。
「アルト君虐めないで!」
「そうよ!」
女子たちが男子たちを睨みつける。
何なんだこれ。
クラス内は異様な雰囲気に包まれていた。
「疲れた・・・」
一日目が終わり、エミリアはぐったりしていた。
あれから男子からの質問攻め。
適当に返事していたらしい。
「それにしても、お兄ちゃん驚いたぞ。まさかあんなに人気があるとは・・」
「それを言うならアルトもじゃないの。女子からどれだけ好かれてるのよ」
肩を落として校門のところまで来ると、後ろから声をかけられた。
「アルト君、それとエミリアさん大丈夫?」
ブリアンナさんが走って追いかけて来たらしい。
少し息が上がっていた。
「ブリアンナさんには本当の事言ってあるからな」
「へえ~仲がいいんだね?」
「お二人とも仲が良くって焼いちゃいますわ」
「ん?何か言った?」
「何でもありませんわ。もしよろしかったら、馬車で送っていきますけどいかがですか?」
ぼくはブリアンナさんの好意に甘えることにした。
ガタゴト・・。
ぼくたちはエミリアさんの馬車に乗っていた。
「いつも徒歩で学校まで来ているんですか?」
「徒歩と言えば徒歩かな?」
「魔法だよね」
「え?」
「いやさ、風魔法がようやく上達してきたんで飛んで来てるんだよね」
魔力量消費がえぐい事になるけど、練習にはなる。
お父さんは年中風魔法で飛んでたって言ってたけど、魔力量相当ないと無理じゃないかな。
「片道が精いっぱいだけどね」
「往復したら魔力枯渇で倒れちゃうもんね」
「まあっ!そうでしたの」
何故かブリアンナさんに尊敬の眼差しで見られる。
何で?
「そこまでして練習しているなんて素晴らしいですわ。アルト君の一面を知れて嬉しいです」
ブリアンナさんはニコニコしていた。
「わたしも練習したら飛べるようになるでしょうか?」
「ブリアンナさんって風魔法使えたっけ?」
「少しなら・・」
「じゃあ、今度家で練習してみない?」
「良いのですか?是非お願いしますわ」
エミリアが口を大きく開いて驚いている。
「わぁ~お家デートだね?」
何言ってんだこいつ。
何故かブリアンナさんは、エミリアの言葉を聞いて頬を赤らめていた。
そういえば、またブリアンナさんが家に来るのか。
「そういえば、魔法使って大丈夫なの?」
この前の授業で怖がってなかったっけ?
「えっと、皆に注目されるのが不安だったのですわ。アルト君の家なら平気です・・」
目を反らして俯くブリアンナさん。
「バカ、察しなよ」
エミリアに肘を突かれる。
「察すって何を?」
何を言ってるんだ?こいつは?
「鈍感でごめんなさいね。兄に悪気は無いんですけど」
「・・・わかっていますわ。そういう所が好きなんですもの」
馬車は街道を抜け、ぼくの家の近くまで来ていた。
最初のコメントを投稿しよう!