第6話 猫耳の少女

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第6話 猫耳の少女

魔石が3個になった。 炎石と回復石と水石。 僕は朝から上機嫌で、すっかり浮かれていた。 そういう時って大概(たいがい)何かをやらかしてしまうものである。 「あ、お金とギルドカード落とした・・」 冒険者ギルドに来て、いざカードを出そうとしたら無いのに気が付いた。 浮かれすぎていて意識が離れてしまっていたのだろう。 普段ならそんな事しないのに大失敗をした。 「「ええええ?」」「マジありえないんですけど?宿屋に戻って部屋中を探した方が良いわよ」 ウェンディが驚いて大声を上げる。 周りの冒険者達からは注目を集めてしまった。 僕たちは慌てて、宿へ戻った。 「無いわね・・。道で落としたのかしら・・」 再度冒険者ギルドへ行き、ギルドカードは念のため使用停止にしてもらった。 「紛失最短記録ですよ」とギルド職員の人に呆れられてしまった。 「お金は諦めるしかないわね。魔法の鞄(マジックバック)に入れておけば良かったのに」 本当そうだな。 今から後悔しても遅いけど。 再び宿に戻ると、宿屋の入口で立っている背の低い少女がいた。 頭には茶色い猫の耳が付いていて、尻尾もあるので獣人だろうか。 猫耳の獣人さんって可愛いな。 「ここにいるはず。男の子いない?」 「男の子って言われてもねぇ・・」 宿の女将さんと話しているみたいだった。 「どうかしたのかな?」 腰をかがめて猫耳の少女に話しかけると、僕に巾着を差し出してきた。 「これ、道に落ちてた。困っていると思って持ってきた」 「え?あ、ありがとう。凄く困っていたんだ」 (あれ?どうして僕のだって分かったんだろ?) 「わたし嗅覚鋭いから、持ち主わかる」 流石獣人さんだ。 猫耳の少女は大きな目でしばらく僕を見ている。 顔に何か付いているのだろうか? 「折角だから届けてくれたお礼をさせてくれないかな」 「お礼?」 「少しだけど、お金とか・・」 「じゃあ、家に来て。町から少し遠いけど」 猫耳の少女に連れられ、僕とウェンディはついていく。 プノンの町を出て、しばらく歩くと森の近くに家はあった。 「ここわたしの家。入って」 僕とウェンディは促され、家に入る。 家に入ると顔色が悪い猫耳の女性が台所に立っていた。 家事をしていたようだ。 「ミヤおかえり。あらお客様?」 「母が病気なの。トワ治して」 僕は一言も回復石のことは話していない。 「僕、回復魔法持ってないけど・・」 「わたし(かん)で分かった。トワなら治せるって思った」 「病気は治せるかわからないよ?やったことないし」 「多分大丈夫。わたしの(かん)は外れた事ない」 どうやら、魔石の事を知っていた訳ではないようだ。 「ちょっと、お母さんのステータス覗くけどいいかな?」 「よく分かんないけど治るならいい」 ミヤが即答した。 『ステータス』 僕はミヤのお母さんのステータスを見た。 「何か見えているの?」 やっぱりウェンディには見えないらしい。 「病気って言っていたから何かわかると思って・・」 ------------------------------------------------------------ フレイマ 45歳 猫族 生命力 40/450 魔力  400/400 攻撃力 100 守備力 150 素早さ 200 スキル 精霊の加護 ※瘴気(しょうき)による弱体化 ----------------------------------------------------------- 瘴気(しょうき)ってなんだ? もしかして病気では無いのかもしれない。 これなら回復石でも大丈夫なのかも。 「じゃあ、やってみるね。ミヤのお母さん、今から魔法かけますけど驚かないで下さいね」 僕は回復石をマジックバックから取り出した。 手に石を乗せて詠唱する 『光よ・・』 ミヤの母親、フレイマの体が淡い光に包まれた。 「あら、体が軽いわ。貴方、一体何をしたの?」 『ステータス』 ---------------------------------------------------------- フレイマ 45歳 猫族 生命力 40/450 魔力  400/400 攻撃力 100 守備力 150 素早さ 200 スキル 精霊の加護 ----------------------------------------------------------- 「もう大丈夫みたいです。治りました」 変な項目は消えたみたいだ。 生命力もそのうち戻ってくるだろう。 フレイマさんも少し顔に赤みが差しているようだった。 僕は落ち着いた頃合いをみて、フレイマさんに訊ねてみた。 「瘴気(しょうき)って何ですか?」 「瘴気っていうのは、人にとって悪い影響を与える気かしらね。(私は猫族だけど)魔族とかは平気らしいわ。あら、もしかして私のステータスが見えてるのかしら?」 フレイマさんはステータスの事を知っているらしい。 「あまり口外しないでほしいのだけど・・テオスの森の奥深くに瘴気が強い場所があってね、そこは高濃度のいい薬草が採れるんだけど・・油断しちゃって長時間居たせいで瘴気に当てられたみたいなのよね。娘には心配かけちゃったわ。治してくれてありがとうございました。何かお礼を・・あら?トワさん、もしかして呪われてます?」 思ってもいなかったことを聞かれた。 フレイマさんも昔冒険者だったらしい。 お金を稼ぐためにたまに高価な薬草を取りに行っていたという。 「知り合いの精霊族にお願いしてみましょうか。色々知ってる人達だから、今手紙を書きますので待っていてくださいね」 僕はフレイマさんから手紙と緑色の指輪を預かった。 精霊族に対する紹介状みたいだった。 「ウェンディ、精霊っているんだね」 「精霊じゃなくて、精霊族でしょ?精霊はふわふわした小さい羽の生えた人で、精霊族は人間と同じくらいの大きさらしいわよ?」 何だか知らないけど、叱られた気がする。 ウェンディ物知りだなぁ。 僕とウェンディは外に出ていた。 フレイマさんから言われた通り、近くの大木に指にはめた緑色の指輪を当てる。 すると縦に細長い空間が現れた。 人が通れるくらいの大きさ。 指輪を使うと、精霊族の村へ行けるらしい。 ドラ〇もんのどこで〇ドアみたいな感じなのだろうか。 「「す、凄い!」」 「ほら、さっさと行くわよ」 ウェンディに背中を軽く叩かれ促される。 空間をくぐると、緑豊かな自然の中。 別世界に入ってしまったようだった。 鳥のさえずりが聞こえて、木々が騒めいている。 「誰だ」 辺りを見回していると、緑色の髪をした耳が長い男に声をかけられる。 槍をもっているので、村の門番だろうか。 「精霊族の方ですか?」 「確かにそうだが」 「これをお願いします」 僕は門番に手紙を渡す。 門番は手紙の差出人を確認して 「分かった。これから村長の所に案内するから着いてくるがいい」 素朴な木の作りの家々が見える。 こじんまりとした村のようだ。 その中でも少し大きめな家の前に来た。 「フレイマ様の紹介の客人を連れてきました」 床は絨毯が敷かれている。 床には耳が長く、緑色の髪の白髪交じりの老人が一人座っていた。 「そうか。ご苦労だった」 老人に頭を下げ下がる門番。 僕とウェンディは家の中に入る。 村長は手紙を開封し読んでいた。 「君が呪われていると?見た感じは普通の人間の様じゃが・・どれ」 村長は僕の前に手をかざした。 「おお、これは中々厄介な物じゃのう。これは生まれつきなのか・・後天的なものなのか・・」 村長は少し考え込み、机に無造作に置かれていた小瓶を取った。 「この聖水で呪いが取れるか・・まあ、物は試しじゃな。これは一族に受け継がれている聖水じゃ。ほぼどんな状態異常も治すものじゃから治るとは思うが・・」 僕は頭から聖水をかけられる。 普通に冷たい。 「体に変化はあるかの?」 「えっと・・」 正直よく分からないな。 『ステータス』 ----------------------------------------------------------- トワ・ウィンザー 15歳 魔法使い 生命力 800/800 魔力  1000/1000 攻撃力 250 守備力 100 素早さ 100 スキル 火魔法・水魔法・風魔法・土魔法・光魔法・闇魔法 炎石・水石・癒石 ------------------------------------------------------------ 「うわっ、何だこれ」 「おお、人種族にもステータスを使える者もいるのじゃな」 僕のステータスを覗き込んで村長は笑っていた。
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