壊れた壁

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 「なんで貴方が来るの……」  「お前がいたって分かってたら来なかったよ…」  仕事疲れでとあるキャバクラに入り俺の応対をしたキャバ嬢は元嫁の光恵だった。  光恵はうんざりした様子で俺の接客を初める。  「最近どうなの?」  「ボチボチだよ。お前は?」  「まずまず」  「へぇ」  煙草に火をつけようとすると「待って」と彼女が良い変わりにライターを持ち火を付けてくれた。  「慣れた手つきだな」  「おかげ様で…あれから夜の世界の色んな事を学んだから」  「お前が招いた結果だ」  俺の声は自分でも驚く程冷たかった。  元嫁、光恵は白昼堂々と浮気しやがったのだ。  俺はその場に出くわし男の頭を思いっきり殴った。  浮気相手の男はそのまま逃げ今でも見つかっていない。  怒りの鋒先はベッドで服を着てヘラヘラ笑う光恵に向かった。    『なんでこんなことをした!』  『別に……あんたに飽きたからよ』  『お前……!』  光恵を殴る気力すら俺には沸かなかった。  当日の内に光恵を追い出し俺は一人家で泣いた。  そこからはスムーズだった、翌日に弁護士に連絡を入れ光恵に慰謝料を請求した。  慰謝料請求時に対面した時も光恵はヘラヘラ笑っていたが……何処か無理している感じがあった……今更罪悪感を感じようが知った事ではない。  ……だが俺は離婚後に光恵が俺に隠していた『秘密』に気づき彼女の一連の行為に合点がいった……。    「さあさ。なんでも聞くよ。私への愚痴をぶつけちゃいなよ。怜汰」  「……強がるのは辞めろ」  「……え?」  光恵は困惑した様子でこちらを見つめている。  「誰よりも優しく俺を愛したお前がなんであんな行動に出たか答えはこの紙にある」  俺は一枚の紙をテーブルに置くと「どうして…」と光恵は泣き出した。  テーブルに置かれた紙は光恵のカルテだ。  そこには不妊症と書かれていたのだ。  「……ごめんなさい。怜汰。ごめんなさい。子供を産めないと貴方が知ったら幻滅すると思って……だから」  「お前は馬鹿な女だよ……子供なんて産めなくたっていいんだ。お前がそばにいれば」  「怜汰!」  二人は静かにキャバクラ内で抱き合った  後に再婚し人生を共に歩んだという……。  
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