3411人が本棚に入れています
本棚に追加
第一章 就職
カランカラン……。
「いらっしゃいませ~こちらへどうぞ」
いつも通りの朝。モーニングは忙しい。
父や母と一緒にこの二号店を出してから、前の店よりも場所が駅に近いせいか、若い人が客層に入り込み、非常に人気店となった。
チェーンといっても、実家の一号店のほうは住宅街にあり、その近所の商店街の人など街の喫茶店の趣だ。
そちらは兄が継いだ。祖父の店だが、祖父は病気で二年前亡くなった。
兄が隣の家に住む緑ちゃんと切り盛りしていたが、その緑ちゃんとようやく春に結婚した。
緑ちゃんは私達兄妹の幼馴染。緑ちゃんはずっと兄を慕ってくれていた。
彼女は会社勤めをしながら土日は店に出て兄を支えている。
兄は彼女に会社を辞めさせようと攻撃しているらしいが、うまーくそれをかわしている緑ちゃん。所詮、兄なんて緑ちゃんには敵わない。溺愛しているから嫌われたくないのだ。男ってだめね。
先週のことだ。二号店で両親と共に店を切り盛りしている私に突然、就職のはなしが舞い込んだ。
「森川さん、良かったら当社に入りませんか?」
最初のコメントを投稿しよう!