第一章 就職

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 「それは構いませんよ。結婚退職する人だっているんだからね。でも、森川さんは辞めないと思うなあ。絶対楽しくて辞められないパターンだと思う。目に浮かぶよ」  私もそう思う。だからこそ、踏み切れない。はあ。  「まあ、ご両親と相談して下さい。良いお返事を期待してます」  そう言うと、彼は颯爽と帰って行った。  机のうえの空になったコーヒーカップと皿を下げて戻る。  レジの前で座って、一部始終を見ていた母がひと言。  「好きにしなさい」    「え?」    「だから、好きにしなさいって言ったのよ。お父さんは私に任せなさい。どうせお前が何を言っても反対されるから……お前のこと溺愛してるしね。奏のことはどうでもいいみたいだけど、お前は別なのよ、あの人……」    「お母さん……」  
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