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彼の顔を見ると、係の人が席を案内してくれる。奥の窓際。
カクテルを頼むと、彼は私の手を握りながら話し出した。
「菜摘。業務部の仕事は新村君に大分前から引き継ぎ内容を精査させている。彼の案に従ってやってもらうつもりだ」
ずるい。私が言い返せないように、最初から巧を引き入れたのね。
「どうして、そうなるの?嫌だと言ったはずです。私、業務部の仕事が大好きなのに。知ってるでしょ、俊樹さん。意地悪」
私が上目遣いに言うと、ハアとため息をつかれた。
「菜摘。小悪魔ぶりはやめてくれ。そんな風に見られたらこっちが腰砕けになる。いいかい、君は僕の秘書であり、政策秘書だ。分かっていると思うが君には普通の秘書がやらない業務をやらせてきた。それは君の能力を僕のために貸してもらうためだよ」
「だから、それが嫌だとは言っていないでしょ。秘書と業務部の仕事を両方させてください」
彼は私の両手をつかんで自分の膝へ引っ張った。
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