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「菜摘。よく聞け。これは秘密だが、俺の本名は氷室俊樹。氷室商事の次男だ。永峰は母の旧姓。社長はいとこだ。父が氷室商事の社長だから、いずれ氷室へ帰る。ここにいるのは一時のことだ。しかも、役員になるのは前から決まっていたことなんだ」
私はびっくりして、目が丸くなるほど驚いた。どういうこと?氷室商事ってこの会社より大きい会社でしょ?え?次男?
「何それ?嘘ついて騙してたの、私のこと……」
「そうじゃない、落ち着いてくれ。三橋と氷室は遠縁だ。元々取引がある。この会社には父の意向もあって入ったんだ。もちろん、三橋の会長や社長も了承している。業務部にいたのも理由があるが、それはおいおい説明する。俺のものになったらね」
私は立ち上がって一歩下がった。彼は驚いた。
「話がおかしい。理解できません。私、そんなつもりじゃない。俊樹さんがそんな大きな会社の人だなんて、他へ戻るとか……」
パニックになっている私を彼は抱きしめて、荷物とコートを片手で持つと、私の手を引いてバーを出た。
エレベーターに乗せられるとすぐに壁に押しつけられた。
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