溺愛

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 抱かれる前に聞いたことがうやむやになってしまう。 整頓しないといけない。つまり彼はどこぞの御曹司で、さらに身分違いが大きくなったうえ、いずれこの会社を出ると言っていた。    付き合うことは結婚を意味していて、秘書をやめることもできない。  ちょっと待って。私は何のためにあの会社へ入ったの? 業務部の仕事が向いているとスカウトされて、一大決心で入社した。    しかも、入ってみたら想像以上に仕事が自分に向いていたから楽しかった。 それなのに、その決心も、今までのキャリアもすべてを彼に取り上げられてしまう。  許せるの?そんなはずないでしょ。でもそれを彼に言ったら別れようと言われるんだろう。  彼は付き合う女性を側におくと宣言した。私は彼ときっと別れられない。なぜなら……他でもない。彼を愛しはじめている自分を認識したからだ。  これ以上大人の関係を続けると、拒みきれないと警笛が鳴っている。  結局どちらも選べない菜摘は、前日寝かせてもらえなかったこともあり、気付けばベッドのうえであっという間に寝てしまった。
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