第一章 就職

8/8
前へ
/189ページ
次へ
 「ううん。お兄ちゃん、私ミツハシフードサービスに就職するね、春から」    「は?」   「課長さんに誘われて、お母さんからは了承もらった」    「……いつかそう言うと思ってたよ。お前は喫茶店ごときで満足できる奴じゃない。そうしろ。親父は俺が何とかする」    お兄ちゃん、大好き。    「ありがとう。私もしかすると喫茶店に戻らないかも知れないけど。緑ちゃんがお腹の子を跡継ぎにしてもいいって言ってくれた」   「はあ?」    「ふふ。お兄ちゃん、緑ちゃんには敵わないねえ……」    「そうだな。あいつがいない毎日なんてもう想像つかない。俺はホントに馬鹿だった。危なかったよ。ありがとな、菜摘」    「緑ちゃん、身体気をつけてあげてね」    「ああ。お袋たちにもよろしくな」    「うん」    そう言って私は店を後にした。  父は大騒ぎしたが、母と兄が味方になりあっという間に就職が決まったのである。  
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3402人が本棚に入れています
本棚に追加