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俺の名前は佐竹博(さたけひろし。)年齢は25歳、実家暮らしのただの無職である。
父親は仕事、母親はパートに出掛けている。そんで今日の俺はハロワークに行かず、昼間からゲームをして1日を満喫している。両親は何も言わないが、いい加減に働け。と、威圧感が食卓の中で伝わってくる。
仕事を見つけないとな………。
───時刻は午後12時。
「腹が減ったな………」
部屋でゲームをしていて、気がついたら昼の12時だ。
コントローラーを置き、とりあえず部屋から出る俺。
ガラガラ………。
(何だ?)
ガラス戸から入って来る音に、俺は階段を降りてリビングに足を運ぶ。
(げげっ!!)
俺はパニックになる。何と、リビングには強盗がいたからだ。バールを片手に、作業服に目出し帽を着用している。強盗は安全靴を履き、リビングの床を歩き回り、部屋の中を物色している。
「何をしているんだっ!?」
俺は勇気を出して声を張り上げる。強盗は振り向く。
「何だお前、住人か?」
強盗はバールを片手に寄って来た。やばい、近くでみたら筋肉質でがっちりしている。このままでは、殺される。
そうだ………。と、咄嗟に思いついた。
「違う、俺は空き巣だ。アンタより、先にこの家に入って来たんだ」
俺は誤魔化す。
強盗は不審に伺う。そして尋ねる。
「空き巣だぁ?………何で空き巣なのに、そんなパジャマみたいな格好をしているんだ?」
強盗の強い口振りで言う。強盗の声に、俺は冷や汗を額から流し………。
「それは………自分、今はニートで、何とか仕事に就こうと面接に行ってるけど、どこも雇って貰えないから………」
「そんで空き巣か、気持ちも突発で、衣装もパジャマで初めてってとこか?」
「そんな所です」
俺は頭を掻いて答えた。ウソだけど………。
「そうか………お前も大変だったんだな。俺も似たようなモンだ、俺も昔は会社員をしていて、違法な残業の毎日で身体を壊して辞めて、次の就職先を見つけようとしても、病気が原因で、どこもかしこも不採用だ………」
強盗は弱々しいため息。その言葉に、俺は答えが思いつかない。
「やめだ、やめだ………強盗なんて、お前のような安い空き巣を見ていたら、馬鹿馬鹿しくなったわ………」
強盗は、そう言い残して出て行った。
───その後。
俺は晩飯のハンバーグとサラダ、味噌汁とご飯を食べていた。
俺は口を開く。
「親父、母さん………」
両親は視線を向けてくる。
「俺、頑張るから。仕事に就けるようにさ………」
「そうか、頑張れよ」
親父は新聞を広げ、何処か安心した様子で言った。
───決心したのは、あの強盗とのやり取りが頭に浮かんだからだ。犯罪を犯す人は、ほとんどの人が社会的地位から脱落したからと知ったからだ。彼がもし、あのまま会社員として再就職して働いていたら、強盗をせずに済んだかも知れない。
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