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翌日、学校の廊下で。
あくびをひとつ噛みしめる。すると前からやってきた男子にドン、と軽くぶつかり「ごめんなさい」と伝える。私は昨夜あのアプリのせいで寝不足なせいもあり、注意力散漫だったようだ。陽気そうな男子は「俺こそよく見てなくてごめん」といって、走り去る。その向こうには夕凪くんがいた。
夕凪くんへと視線を移すが、特に私の方を見ているなどはなかった。私だけが妙に意識してしまい、なんだかそう考えると申し訳ないくらいだ。
たかがアプリの占い結果、運命の相手だなんて簡単に見つからないよねと私は考え直し、そのまま廊下を歩くと――……
「西野さん、落としたよ」
そういった夕凪くんから、私のハンドタオルを差し出される。
「あれ、カバンに入れっぱなしだったと思ってた。さっきぶつかった時に落としたのかも、ありがとう」
お礼をいって、その場を後にする。けれども次の授業後に。
「西野さん、消しゴム落ちてたけど」
違和感を覚えたが、見ると確かに私の消しゴムだ。記名をしているので間違いない。けれど、なぜ、なぜなの? ペンケースから飛び出て落ちたとでもいうのだろうか?
「ありがとう……」
まさか紛失3回目はないだろう、と念のため、何も落としてないし失くしていないことを確認する。大丈夫、荷物は全部そろっている。けれども――……
「西野さん、ちょっと」
「また!? え、嘘でしょ! 今度は何を落としたの?」
「……違う。西野さんの靴が俺の靴箱にまるごと入ってた。もしかして西野さん、わざとやってるの?」
「ち、ちが……」
睨まれ慌てて首を振る。弁明しようとしたけれども、どういえばいいのか、自分でもわからない。こんなに私、何度も何かを落としたりした? 靴箱に一緒に靴が入ってた、って何? しかも、全部関わってるのは夕凪くん、って……。
夕凪くんは自作自演していると思ったのか、疑るような眼差しで物言わず腕を組んで私を見た。思わず私は違う、と何度も小さくいうしかなかった。
なんだろう、何か、何かがわからないけれども怖い。知らない何かが背後でうごめいているようで、まるで何かが糸をひいているような――私には、そう思えた。
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