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「ママ……」 生後七ヶ月になる娘の柚奈(ゆな)が私を呼ぶ。 「柚奈。どうしたの?」 「パパ……」 「パパはお仕事だよ」 「パパ……」 「ママと遊ぼうか」 「うん」  柚奈を膝に乗せて大好きな絵本を読み聞かせる。  月曜日の午後。夫の(あきら)の携帯に掛けても出ない。  仕事中だと思ったけれど、急に瑛の両親から旅行の序に夜、少し寄るからと電話があったから、早く帰れるか聴きたかったのに……。  夫の両親は岡山に住んでいて、東京には滅多に来れない。  せっかく来てくださるのに会わずに帰せない。  仕方なく彼の同僚の冨川さんに電話を入れた。 「瑠美(るみ)ちゃん。どうしたの?」 「瑛の携帯に繋がらなくて。今夜早く帰るように伝言お願い出来ますか?」 「いや。きょうは有給休暇取ってるけど……」 「えっ? それ本当ですか?」 「うん。瑠美ちゃん聴いてないの?」 「あぁ。はい。お仕事中にすみませんでした。失礼します」 「あっ、待って。何かあったらいつでも相談に乗るからね」 「ありがとうございます。では……」
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