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出会い
俺は無心に、羊を数え続けていた。
羊が、八百二十匹、八百二十一匹、……
ああ、全然寝られる気がしない。
しかし、続けるしかないのだ。
もはや、信じるしかない。
この有名な睡眠導入の方法を――
ん? 羊の数字だらけの中に、何か飛び込んできたっ!
綿毛? おおっチビっ仔羊か!
もふもふ、フワフワ~
そうそう、こういうのを求めてたんだよ!
癒やしだ、心が癒やされる~
わわっ! チビっ仔羊がまた増えたー!
これは、夢だな。間違いない。
やっと俺は、眠ることができた。
信じる者は、救われる――!
夢だから当然、弾丸のように飛び込んできた、癒しのチビっ仔羊たちも、キャッチできる。
「おっと……おチビちゃん、何をくわえてるの?」
腕の中の一匹が、必死にくわえている物をのぞきこむ。
「ひも……の先は茶色い、植物? 木、の欠片かー?」
「ちがう、ちがう!」
「ふえ、だいじなだいじな、ふえなの!」
うぉっ! 喋ったー!
笛らしいものをくわえた仔羊の両脇のが、話したぞ。
さすが、夢だな! ファンタジーだ。
「そうなの?」
ウンウンと懸命に頭を上下にふる、腕の中の三匹の子羊。
カワイイ、癒される。
「パン神さまの、だいじなふえなの」
「しゅりんくすの、ふえ」
パン神さま……って、何だったっけ?
シュリンクス――聞いたことあるような、う~ん。
考えこんだ俺の耳に、メェーーーという切羽詰まった音が届く。
思わず、音の方向を見たオレの身体は、固まった。
何だよ、アレ?!
いくら夢でも、こんな展開は望んでいない!!
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