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木漏れ日のような眩しい笑顔
「ないと困るかと思って届けに来たのよ。」
鼻のあたまに汗をかいて一つに縛った髪の毛の後れ毛が首にべったり張り付いている。
ハンカチで無造作に拭きながらふーっと深呼吸して、こっちをみた。
「こんにちは、バイトの子?
いつも主人がお世話になってます。」
屈託のない笑顔で挨拶されあわてて頭をさげた。
奥さん…、だった。
今みえてる範囲では普通の仕込み作業の絵図だ、何も疑われる要素はない。だけどなぜか変に緊張する。
この黒くて薄暗い無機質な空間に突如現れた彼女や子供たちはなんだかこの雰囲気に不釣り合いな程、眩しく見えた。私はここでずっと彼の何を見て来たんだろう。
動物のかいた淡いパステルカラーの服は日向の日だまりのような穢れない空気を身に纏っている。
それに比べて自分がすごく惨めに薄汚れている気がして仕方なかった。
なんだかその目に見透かされているようで後ろめたさが襲う。
「わざわざ届けに来なくてもよかったのに。子供たち連れて大変だったろ…」
その声がいつもの店長の声じゃなく、父親の声になってた…。
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