黒いサングラスの下

5/5
前へ
/19ページ
次へ
 そんなある時、新しい家庭教師のバイトのいい話が舞い込んできた。  きっと今のこの環境を絶ち切るためのいい切っ掛けになる。  この居酒屋のバイトも【月曜日の休日出勤】も辞めよう。  こんな事、もう終わりにする…。  そう決意して自転車に乗り月曜日の店に向かった。 *  今朝もキッチンに立つ黒いエプロンのよく似合う彼はスマートであんな裏の顔があるようには見えない。 「この旬の魚をどうやっつけるか…。決め手はやっぱりこの黒トリュフだな」  手のひらにのせた黒いトリュフを鼻につけて匂いを確かめてる。黒トリュフは今日も魅惑の香りを放っている。  真剣な顔をしているシェフ姿の彼を初めはカッコいいと思っていた。  彼の大人の色気が高校生だった私を惑わせた。このトリュフみたいに…。  彼の料理の腕は素晴らしい。  センスも抜群で見た目の仕上げ方も独創的で文句の付け所がない。  有名ホテルで働いていただけあってその腕は一流だ。  
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加