誘惑と欲

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誘惑と欲

 普段頑張る自分へのご褒美に、高校生だった私は少しだけ背伸びをして大人の雰囲気の店にふらっと一人で入った…。  居酒屋がやってる平日ランチ。  その味と見た目のセンスに惹かれ月に一回バイトのお給料日に自分へのご褒美で立ち寄るようになった。  ランチの常連客となった私はカウンター席の端にいつも一人で座る。  カウンターの向こうに立つ店長とは自然と話すようになった。黒いシャツに黒いパンツ、腰に真っ黒なエプロンの彼はとても素敵に映っていた。  身の上話などをするようになると、大人の彼は家族のために頑張る高校生の私の事をいつもすごく褒めてくれた。  お洒落なランチを食べながら悩み相談にのってくれる大人で素敵な店員さん。月に一度こうして大人な気分で憂さ晴らしが出来るのが楽しかった。  大学への進路も決まり心にも時間にも余裕ができた頃、このお店のバイトとして彼に誘われた。私は何の疑いもなく勤め始めた。  やがて魔の手が延び大人の罠に堕ちていく…。  お金を欲しがっている事や質素な生活で節約しているところに漬け込んできた大人の彼はそんな私を巧みに誘ってきた。  黒いトリュフみたいに大人のフェロモンを振り撒きながら。  
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