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第6話 復讐劇には準備が必要です
お互いの婚約者に……復讐?
私の婚約者がレックスだというのは、愚痴った時に話した気がするけれど、ヴィンセント先輩に婚約者がいるのは初耳だ。
先輩に婚約者……そりゃあ、こんなに素敵な人なら居ても不思議じゃない。
ズキンと胸が軋む。
考えが上手くまとまらない。レックスに復讐するのをヴィンセント先輩が手伝う──と言うのならわかる。でも「お互いの婚約者」という言葉が引っかかった。
「(そういえば、レックスの恋人のライラって人にも婚約者がいたような?)ヴィンセント先輩の婚約者って……もしかしてライラって人?」
「元婚約者よ。……シンシアと最初に出会った時の部屋って、ガゼボが一望できる場所なのよ。そんでもってよく声が響くの。ここまで言えば分かるかしら?」
「あ」
レックスの本心を聞いて、特別教室に逃げ出したあの日、ヴィンセント先輩もレックスとライラの会話を聞いていたのかもしれない。
いいや、私よりももっと長い時間、耳に入っていたとしたら、きっと傷ついただろう。
「私は一回聞いただけで、かなり凹みましたけど、ずっと聞き続けるのって辛くありませんでしたか?」
「私の元婚約者……といっても彼女の両親が私のことを嗅ぎつけて、強引に結んだものだったから、彼女に思い入れは全くないの。むしろ政略結婚的なアレに近いわ」
「強引……」
貴族社会では親同士が決めた婚姻は普通だし、政略結婚なんてザラだから驚かないけれど、実際に目の当たりにするのは何というか、前世で割と自由恋愛が一般的だったので、物語のような世界だなぁと他人事のように思ってしまった。
よく考えたら、私とレックスも親同士が盛り上がって決めたものだったわ。
「まあ、当時は婚約者がいないと何かと面倒だったから気軽に引き受けたの。目立たない格好で会ったら、見向きもされなかったのだけど、最近になって婚約解消の打診が来たから喜んで解消したわ。彼女の素行の悪さもあったし、ちょうどよかったし」
その発言に引っ掛かりを覚えた。よく考えたら、疑問だったのだ。着替えただけで、令嬢に囲まれる先輩だけれど、特別室に押しかけるような感じはなかったはずだ。そもそも特別室の棟に行く女子生徒は見かけなかった。
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