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ヴィンセント先輩は言葉通り、とんでもない場所にある図書館に案内してくれた。まさか湖の上に浮かぶ扉から図書館に繋がっているとは思わなかった……。
白銀の美しい湖の中央に、ポツンとある装飾が施された重厚な扉!
湖の上に浮いているだけで、ファンタスティックな感じで感無量なのだけれど、その扉を守るかのように水中に巨大な白水蛇が泳いでいるのが見える。
小舟とかで行ったら確実に沈められるわね。
「ふふふ、シンシアならどうやってあそこまで行く? ちなみに浮遊魔法は空に鳥蜂がいるからお勧めしないわ」
「それなら魔糸魔法蜘蛛の橋」
シュルシュルと白銀の糸が紡ぎ形を成す。
自然に漂う魔素から魔糸を紡ぐので私の魔力はほとんど減らない。蜘蛛の巣に似た紋様で構築した白銀色の橋を作り上げた。
美しくはあるけれど、静かで、やっぱり地味だわ。うん。
「すごいものを作ったわね。芸術的で静かかつ魔力の乱れもない。完璧だわ」
「ありがとうございます……」
ヴィンセント先輩に褒められるたびに、嬉しくて口元がニヤけてしまう。単純だと呆れないといいけれど……。
「(あの一瞬でこれだけのものを作り上げるなんて……やっぱり辺境伯だけはこの国だけではなく、周辺諸国の実力者よりも頭一つ抜きん出ているわね)……シンシア、私は自分の力であとから行くから、先に図書館の中の入っていて」
「え。先輩の魔法を見たいのですが……」
「うーん、私は力技だからまた今度ね」
「──っ!」
さりげないウインクに心の中で悲鳴を上げた。きゃああああああ。か、かっこう良すぎる!
ヴィンセント先輩の色香に当てられて、気づいたら図書館の中にいた。
ロビーはとても広くて、飴色の床に王城を彷彿とさせる絨毯があった。周囲を見渡そうとしたところで、ヴィンセント先輩の姿を見つける。
「ふう」
「(魔力量はそこまで減っていない?)先輩はどうやって入ったのですか?」
「ん? 私にはシンシアのような細かなことはできないから、貴女が扉を開けた瞬間、肉体強化して全力で水面の上を走っただけよ」
「はし……」
「ついでに水蛇も出てきたから、斬り捨てておいたわ」
「(予想以上の力業!)見てみたかったな……」
「あら。じゃあ私の本気が見たいなら別の日にしましょう」
「いいのですか?」
「もちろん。お互いの実力を知るためにもいいと思うし……シンシアに良いところを見せられるでしょう」
「はう」
途中から耳元で囁くのは、反則じゃないですかね!?
まだ婚約破棄していないのにヴィンセント先輩にドキドキしている。うう、これじゃあレックスと同じになっちゃうわ。ヴィンセント先輩に惹かれる気持ちはレックスと婚約破棄するまでは封じておかなきゃ!
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