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図書館は広々としていて、吹き抜けの天井に、円状の室内は壁という壁に本棚がある。深紅の絨毯に、飴色の本棚、高級感溢れる内装も素晴らしい。何より見たことのない本の山に、感動して涙ぐんでしまった。
「どう、すごい数でしょう……って、シンシア?」
「はい。……ヴィンセント先輩、どうしましょう。『魔女の造る宝石集』『悪魔と天使の幻想魔導書』『幻想薬草シリーズ集』『十二貴族と祈りの歴史』ああ、ずっと探していた『神々の黙示録159』まである! こんな沢山の本と巡り会えるなんて……! 幸せすぎて私、胸が一杯です」
「ちょっ、感動するのが早すぎるから! ほら、泣かないの! 泣き顔も可愛いなんて反則だわ! ずるい!」
ヴィンセント先輩は花の香りのするお洒落なハンカチを取り出すと、私の涙を拭ってくれた。何という女子力。私の手を掴んで近くのソファに座るように促してくれる。
その優しさにまた涙が出そうだ。
この図書館を管理しているのは魔女と鳥族らしく、鳥は黒いペンギンさんたちが二足歩行で本の整理をしている姿もラブリーで可愛らしい。
前世で夢見たファンタスティックな空間に、胸がいっぱいになる。
「すごい……。ここには夢見た本の山と、可愛いペンギンさん……ヴィンセント先輩……天国? 召されちゃう?」
「召されないから。ほら、ちょっとここで待ってなさい。どんな本が読みたいのか私が探してきて上げるから! あ、あんまり泣き止まないとキスして、涙を止めるわよ?」
私と同じ目線になるように先輩は膝を突いて騎士のように傅く。その姿がまた絵になる。
なんとも贅沢なことだ。
途中で脅しが脅しになっていないのだが、突っ込むべきだろうか。
「な、泣き止みます? あ、キス……は……ほしい……あっ……その……」
「(私の理性をゴリゴリ削る気!?)ん?」
「……先輩と一緒に探したいです」
「可愛いことを言ってくれちゃって! じゃあ、一緒に探しましょう。シンシアはどんな本が読みたいの? ここは稀少な本もあるから探している本なんかも見つかると思うわ」
「はい!」
「「「しーーー」」」とペタペタと歩くペンギンさんに、指摘されてしまった。慌てて頭を下げて謝ったけれど、ペンギンさんがとっても可愛らしかった。
ハグしたいと呟いたら、ヴィンセント先輩がギュッとされたので、違うけれど違うとはいえなくて固まってしまうのだった。
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