第5話 復讐のお誘い

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「この十三区域の森以外にも、色んな時空や別世界にも各店舗があって、様々な種族の客が来店するらしいわ。扉に入る条件は『お腹を空かせている』っていうのよ。面白い条件よね」 「条件も可愛い。見た目も私が小さな頃読んだ童話のままで、すごく好きになりそうです」 「でしょう。いつか私の姉や妹を連れてきたいって思っているのよ。まあ、故郷に扉ができるのが一番手っ取り早いのだけれど」 「お姉さんと妹さんがいるのですね」  ヴィンセント先輩が自分の話をするのは珍しい。何処か自分の話をしたがらないので、ちょっと、いやかなり嬉しい。 「うちは大所帯で姉が五人、妹が三人いるのよ。で、私はその中で男一人だったのだけれど、姉や妹と一緒にドレスやママゴトをするのが好きだったから、姉の一人が刺客に襲われるまでは自分も女の子だって思い込んでいたもの」 「刺客!?」 「そう私の国はちょっと複雑で、姉たちが狙われることが多かったから、守るために魔法剣を編み出したの。ほら、魔法剣って無から有を生み出すでしょう。ドレスに武器を隠し持っておく必要も無かったから、とっても重宝したのよ。それから十二歳で魔法剣を極めて、ふと思ったのよ。私がいくら強くなっても、ずっと姉や妹を守り続けるのは難しいって。そこで姉や妹に必要なのは、魔法や暗殺にも耐えられる防護用ドレスだって閃いたのよ!」 「なるほ……ん?」  独創的な発想を理解するのに、数秒ほどかかった。  まさか自分を鍛えるだけではなく、防護服を自分で作るという発想がすごい。なにより特待生入りしているのだから驚嘆の一言だわ。 「ドレスでも付与魔法や素材の使い方次第では、ドラゴンの息吹(ブレス)に耐えられるし、急な温度変化にも対応する機能も付けられるってわかったの。他にも防水とか、毒耐性とか素材によって効果があるってわかったの」 「じゃあヴィンセント先輩がこの国に留学したのは、素材集めをして家族に防護用ドレスを贈るため?」 「そう。くだらないでしょう?」  その理由を「くだらない」と言う人もいるのかもしれないけれど、私にはそうは思えなかった。 「そんなことはないと思います。素敵な理由ですし、ヴィンセント先輩は心から素材集めや衣装作りが好きなのだって伝わってきました!」 「ふふっ、ありがとう。魔法の根源を求めて研究する人や、高見を目指すため研鑽している人たちからすれば、お遊びまたは趣味の範囲だって思われるのは覚悟しているわ。別に他人に何を言われようと関係ないけれど、でもそうね。相棒に肯定してもらえて嬉しい」 「(その考えも、姿勢も、志も、成し遂げる実力も、全部。格好いいな……)誰かの為に頑張れるって、すごいことだと思いますよ! ……私の場合は、その誰かがろくでもない男でしたけど」  自分でも自虐的な笑みを浮かべていたのだと思う。ヴィンセント先輩はそんな私の額を指で突いた。 「痛っ」 「何年も会ってなかったのでしょう? 人間、環境や周りに染まりやすい人もいるわ。それともあの男にまだ未練でもあるの? この際ハッキリしなさい!」 「ないです」 「本当に?」 「これっぽっちもないです」 「よろしい」  ニッコリと笑ったヴィンセント先輩は次の瞬間、悪戯を思いついたような含みのある笑みを見せた。こ、小悪魔っぽい!?  「ねえ、シンシア」 「はい?」 「私と一緒に、()()()()()()()()()()()()()()?」 「え」
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