第6話 復讐劇には準備が必要です

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「(おっと、本音が)冗談よ。ほら、猫さん。私の大事な相棒を返して案内してくれる?」 「ハッ……にゃん!」  猫さんは「そういうことか」と一人で納得して、席に案内してくれた。よくわからないけれど、親指を立てて「にゃん」と言われたので「にゃん」と親指を立てて答えた。これでよかったのかな? 「(シンシアに猫耳をつけたら、超可愛いんじゃない? カチューシャ的な形にして、付与魔法をつければ護衛用にもなる? シンシアと一緒だとアイディアが溢れてくるわ!)シンシア、今度私が作る服のモデルになってくれない?」 「え? よくわからないですが、わかりました!」  その日はヴィンセント先輩の考えた復讐について話し合った。  猫さんがオススメと言っていた赤海老のボイル焼きと、白身魚のワイン蒸しは本当に絶品だった。このレストランは魚が絶品だったけれど、お肉も美味しいのだとか。 「次は復讐劇が終わってからでどう?」 「(それって、次がある!?)またご一緒してもいいのです?」 「もちろん」 「楽しみが増えました!」  二足歩行の猫が恭しく料理を運んで来てくれたことも、料理が絶品だったのも印象的だったけれど、ヴィンセント先輩と同じ目的を持つことが一番嬉しかった。きっと私は今日のことを生涯忘れないだろう。  ***  期末テストは支給された制服姿を着用。髪を三つ編みに、分厚い眼鏡をかけて受けた。私がずっと学院に来ていなかったことに対して、何か言ってくるクラスメイトはいなかった。噂もいつの間にか払拭されていて「あ、そういえばあんな子いたね」という感じだった──のなら良かったのだけれど、実際は腫れ物に扱うような視線が居心地が悪い。  それでも陰口を叩かれることもなく普通にテストを受けて、実技もいつも通り地味に終わらせる。  ヴィンセント先輩と出会う前の日々は、こんな感じだったかと懐かしく思った。テスト期間は退屈で、休み時間は本を読むか窓の外をぼんやり眺めていた。この姿でやることが一つ残っている。  レックスとの婚約破棄だ。書面でしっかりと破棄して貰わなければならない。  テストが終わった後、ヴィンセント先輩のいる教室に向かおうと思っていた矢先、レックスが一年生の教室に駆け込んできた。私が出席しているのを確認するなり、一瞬だけ口端を吊り上げたのが視界に映り込んだ。 「シンシア! ようやく学院に来たんだね。俺との婚約破棄が嫌だからって逃げ回るのは、やめてくれ」 「今度はそういう設定にしているのね……」  私が学院にいない――いや毎日、第十三区域の森にいるので欠席しているわけではないのだが、ここでそのことをばらすつもりはない。  すでにクラスメイトはレックスの話を信じ込んでいるのか、私に向ける視線は途端に冷ややかなものに変わる。彼の望む設定に話を合わせて沈黙を貫いていると、一枚の羊皮紙を机の上に投げつけた。
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