第1話 最悪の学院生活

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 レックスへの情も日に日に目減りしていき婚約破棄することを決意するのに、さほど時間は掛からなかった。  ただそうなると別の問題が出てくる。婚約破棄なんてなったら、父や兄が大騒ぎをするのはもちろん、魔法学院に居られなくなる。王都では珍しい本が多く、その読む時間を奪われるのは耐えられない。  婚約破棄をしても、魔法学院に残る方法……。授業や実習は退屈だけど、王都中央図書館、本屋、学院の図書館の本を読みたい。もうこの際、本だらけの生活でも可!  もっと上手く立ち回る方法だってある。考えることは他にもあるのに、思考がぐるぐるして、上手く動けず足踏みしてしまう。「これではダメだ!」と分かっていながらも、精神がゴリゴリと削られて、一歩踏み出す力が入らない。  両親に手紙を書こうとしても、筆が止まってしまう。奮起する力や思いが摩耗していく日々が続いた。  ***  三ヵ月後──。  中間テストで一位になったが、周囲からの視線は更に冷ややかだ。  今日もぼっちか……。でももう慣れたわ。  噂に対して反論も何もせず黙ったことで、一部の生徒は遠巻きに見るだけで話題にしなくなった。  クラスメイトとは挨拶ぐらいはするけれど、友人と呼べるほど仲の良い子はいない。むしろ恋人がいる女子生徒は、敵視してくる。私はいつの間にか婚約者のいる男子生徒を取っ替え引っ替えしているらしい。そもそも男子生徒と一緒にることすらないのに、そんな噂を信じるなんて愚かのだろう。情報操作も中途半端で、問われれば「違う」と答えられるのに、誰もそういった話題を私に投げかけることも、尋ねることもしないので放っておいた。  頼れる人もいないし、学院の授業も習ったものばかり……本が読めるのは貴重だけど、半年もすればきっと読み終わる。そうしたら学院にいる価値なんてないわね。  凹むばかりの日々に、心が疲弊していく。ううん、心が凍えて感情が薄れていく。辛い気持ちを押し殺して、毎日淡々と勉学に励む。ジッと耐えているのは、この場所でまだやりたいことがあったからだ。  読書! 今の心の拠り所はそれだけ。甘酸っぱい恋も、放課後友人とカフェに寄るのも、買い物もできなかったけれど、もういい。  好きなことをして最短で卒業する。  両親と兄に頼るのは最終手段。そのためにも噂の内容をノートに書きまとめて、日記も付けておいた。両親に手紙を送るにしても、泣き言や弱音ばかりの羅列になってしなっては、怒られるのは目に見えてわかっていた。 「やはりお前を王都に出すべきではなかった」とか父が憤慨するかもしれないと思うと、中途半端に助けを求める訳にもいかない。  昔から、私の外見チェックは厳しかったし、魔法学院の入学も父が最後まで反対していたもの。  ふと廊下の掲示板にある単語が目に入った。  特待生制度。  学生でありながらも、魔法省から認められるほどの才能や実績を持つ一部の生徒だけが選ばれると言う。  魔法等級昇格試で実力を見せれば……今の状況が変わるかしら? それに魔法省って言ったら珍しい本や魔導書があるはず……!  そんなことを考えていたら、あっという間にお昼休みになった。そそくさと教室を抜け出して、人気のない裏庭へと足を進める。  お昼休みは裏庭の奧にあるガゼボで食べることが多くなった。誰もいない場所で緑に囲まれながら食べる時間は、唯一の癒しの時間だ。 『ライラ』  ん? この声は……。  ふと聞き覚えのある声が、背後から聞こえてきた。  レックスと……もう一人の美女は……誰?
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