第12話 一度だけの弁明

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 ヴィンセント先輩は眉をつり上げて睨んだ。しかしライラはローレンス先輩の言葉を聞いて、当然のようにヴィンセント先輩の隣に座ろうとする。 「おっとキミはこっちだよ」 「じゃあ僕はシ……マイハニー(可愛い人)の隣に座ろう」  ヴィンセント先輩は席を立ち、その隙にローレンス先輩はライラを空いた席に座らせ、自身は誕生日席に座ってしまった。  なんと無駄のない連携だろうか。  これで私とヴィンセント先輩は隣同士で、彼女と向き合う形になる。でもどうしてもこのタイミングでライラと対話することを考えたんだろう? 「ヴィンセン」 「ライラ・ゴートン」  ライラの言葉を遮って、ローレンス先輩が本題に入った。 「君は聖女魔法を持つ稀有な使い手だ。だからこの場を設けたのは、その才能に対しての温情だと思ってくれ」 「急に何よ。温情? もしかしてローレンスは、私がヴィンセントに熱を上げているのに嫉妬しているの? ふふっ」  嫣然と笑う彼女から絶対的な自信が感じられた。それほどまで自分に自信を持つことができるとは、なんとも羨ましい。 「嫉妬? それよりもよくもまあ、とんでもないことをしでかしてくれたと思っている。下手を打てば、王家を揺るがすほどの大惨事になるところだった。君はそれぐらい厄介な人間を貶めて、名誉を傷つけた。自覚しているかい?」  え? ん? どう言うこと? ここに私たちがいると言うことは、どちらかが被害に遭っている可能性が高い。……でも私はライラを一方的に知っているだけで、面識はない。となるとヴィンセント先輩?  ローレンス先輩の底冷えする声音と威圧に、ライラの余裕の表情が崩れ始める。それでもまだ平静を保とうと強気の笑みを浮かべた。 「自覚するも何も、そんな酷い真似は──」 「君が幻術系の魔導具を使って、ある人物の姿になりすまして借金や男女間のトラブルを起こしているのは耳に入っているし、証拠も揃っている。以前も同じように女子生徒を数人ほど退学に追いやったのも君だね」 「え……?」  ローレンス先輩は淡々と話しているが、その瞳に凄まじい怒りの炎が宿っている。誰も口を挟むことができない。圧倒されつつもライラは何とか声を絞り出そうとした。 「何を──」 「ああ、リファス伯なら既に王家が拘束しているし、教会にも今回の全貌は伝えている。言っておくが君がここで改心していたとしても、厳罰は免れない」 「!?」 「どうだい? 少しは自分の立場を理解したかな?」
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