第13話 復讐劇は幕を開ける

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 ドギマギしながらも復讐を完遂させるため、私とヴィンセント先輩は円状闘技場に足を踏み入れた。一瞬にして観客の目を奪う。 「え」と会場内のざわめきが広がり、その困惑と驚愕がヒシヒシと肌で感じられた。  それもそうだろう。 《亜麻色の乙女》と紹介されて登場したのが、くすんだ麦藁色の三つ編みと分厚い眼鏡、支給された制服を着こなすシンシア・オールドリッチだったのだから。  そしてヴィンセント先輩もまた前髪を隠して地味な制服姿だ。観客席だけでなく、先に登場したレックスとライラも面食らっている。  私はヴィンセント先輩に合図をして行動を開始する。ヴィンセント先輩は前髪を掻き上げ、素早くコートを羽織った。私は三つ編みを解き、眼鏡を外すだけでいい。  長いくすんだ麦藁色の髪が亜麻色の髪に変わり、瞳も琥珀色に戻る。腰まである長い髪を靡かせ、制服はそのままで錫杖を亜空間ポケットから取り出す。  観客席の誰もが目を疑っていた。闘技場は静まりかえる。 『これはなんと、《亜麻色の乙女》の正体は、今年の主席で入学したシンシア・オールドリッチだったようだ! 彼女が美貌を隠していたのは、ある種族から身を守るためだったと情報が入っていますが、ローレンス王子?』 『ええ、彼女の容姿は多種族から求婚されるほど美しい。それ故の偽装であったのですが、その地味で見栄えの悪い外見に目を付けた何者かが、彼女を貶めようと黒い噂を流し、非道の限りを尽くしたようです』  司会者の声で再び闘技場の時が流れ出す。  会場内の《亜麻色の乙女》から私のシンシア・オールドリッチのテロップが出た瞬間、観客たちの声がさらに大きくなった。この反応も想定通りだ。  レックスとライラは目を見開き、固まっていた。 「な、君が……シンシアだって!?」 「――っ、貴女まさか」  レックスとライラは顔を青ざめ、私へと視線をぶつける。責めるような苛立ちと困惑と驚愕と憎悪。  対峙するのが直前まで怖かった。  でも今は違う。 「シンシア」 「──っ」  ヴィンセント先輩が私の制服の袖を摘まんでいるのに気付いたからだ。こんな時に、この人はどうしてこんなに可愛らしいことをするのだろうか。 「ヴィンセント先輩……」 「シンシア。始めよう」 「(そうだ、復讐劇の幕は上がったのだ)……もし、本気で私とヴィンセント先輩に勝てたら、貴方たちの処罰についてローレンス先輩に掛け合ってもいいですよ」  ライラは顔を真っ赤にして、レックスは具合が悪そうに顔を土色に変化させた。
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