第2話 押しつけられた悪役令嬢

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第2話 押しつけられた悪役令嬢

『レックス。こんな所に呼び出して何の話よ?』 『俺のパートナーになってくれ』 『まあ、熱烈ね』 『俺は本気だ。……魔法省に入るためには、数ヵ月後の魔法等級昇格試験で優勝するのが近道だし、俺の四属性魔法に後方支援の聖女魔法の力が加われば、充分に優勝を目指せるはずだ』 『ふーん』  レックスは熱心と言うよりも甘い声音で、美女を口説いているみたいだし、二人の距離はとても近くて、まるで恋人のようだわ。  美女は修道服をベースにした白い服装で、お洒落で可愛らしい。桜色の長い髪に、凛とした顔立ちで、胸も大きく、すらっとした腰回りで、爪先から足元まで身なりに気をつけているのがわかった。私とは大違い……。  二人に見つかりたくなくて、咄嗟に物陰に身を潜めた。なんで私が隠れなきゃいけないのよ。 『レックス、婚約者がいるのに良いの? 彼女は首席でしょう? 点数稼ぎをするなら、そっちと組んだほうがいいんじゃない?』  一見、婚約者である私を庇っているように聞こえるけど、絶対に馬鹿にしているわね。嫌な性格。レックスもニュアンスで察したのか鼻で笑った。 『ライラまでやめてくれよ。地味で、たいしたことない魔法だよ。あんな見すぼらしい姿で、俺の婚約者だなんて死にたくなる。地味で根暗で冴えない女が、俺の婚約者って笑えないだろう?』  自分有責で婚約破棄したくないからって、根も葉もない噂をばら撒いて被害者ぶりするのが腹立たしいわ。いっそこのまま飛び出して婚約破棄を──。 『ふうん。私も後方支援で地味だけど?』 『君は違う。隣に立っているだけで自慢したくなる美人だし、後方支援のサポートだって完璧だ。アイツは野暮ったい髪型に分厚い眼鏡のままで、魔法も地味。代表挨拶した姿を見て完全に冷めたよ』 『まあ。でも彼女、貴方を追いかけてきたんじゃないの?』 『正直、迷惑だよ。手紙のやり取りもお茶の時間も面倒この上なかったし。……俺はあんな婚約者より、君との時間のほうが何倍も価値があるって思っている』 『ふふっ、酷い人ね。でもレックスのそういう素直なところ素敵よ』 「──っ!?」
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