第2話 押しつけられた悪役令嬢

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 ライラという女子生徒はまんざらでもない様子で、レックスから抱きしめられるのを嫌がりもせず、キスまでしている。  二人の仲睦まじい姿よりも、今までの努力全てが否定されたようで、悔しくて、悲しかった。  そうか。  彼女と結ばれるために私を悪役令嬢に仕立てて、婚約破棄を言い出したのね。今まで婚約者だって思っていたのは、私だけだった……。 『なんだか私の婚約者も同じね』 『え? 君に婚約者がいたのかい?』 『両親が勝手に決めてきて、お試しでも良いから三年間付き合ってみなさいって。だから仮の婚約者かしら。地味でパッとしなくて、天才魔法使いだって聞いていたのに、ガッカリしたのよ。入学時に一度会って、それっきり。……両親から卒業するまでに、どうするか答えを出して欲しいって言われているから、やっぱり断ろうかしら』 『じゃあ、君の婚約者の枠に俺が立候補しても?』  ライラの笑った気配がした。こうなることを予測したかのような雰囲気に、ゾッとする。 『そうね。レックスなら……』 『君は華やかな場所が似合う。うだつの上がらない男の隣にいるべき人じゃない。俺にできることがあるなら何でも手伝う。だから、俺のパートナーになってくれ。ライラ、愛しているんだ』 『わかった、貴方のパートナーになるわ。未来の魔法省エースさん』  二人は囁きながら、どちらともなく唇が触れ合いリップ音が聞こえる甘々な展開に。あまりにも惨めで、泣きそうになるのを堪えながら、特別教室のある校舎に逃げ込んだ。  まだ……泣くなっ。泣くな……っ!  周囲を見渡す余裕もなく、目に入った一番近くの部屋に入った。布が幾つもある部屋で、カーテンも閉じている。誰もいないことを確認した途端、我慢の限界が来た。 「ふっ……っ、ああっ……あああああ(悔しいっ、悔しい! あんな言いたい放題!)」  声を抑えようとするが、うまくできずその場に座り込み、嗚咽を漏らして泣き崩れた。近くにあった布で涙を拭いながら、落ち着くまでしばらく時間がかかった。  ***  日差しが傾き、窓辺の小鳥たちの囀りが耳に届く頃、ふと顔を上げたら時計の針は一時半過ぎを指していた。午後の授業はとっくに始まっている。  この特別教室のある校舎は利用者が少ないのか、人の気配はない。  人生で初めてサボったかも……。これからどうしよう。憧れの魔法学院に来たけれど、散々だわ。……このまま泣き寝入りする? 何もなさずに逃げ帰って父様や母様に慰めてもらう? 兄様に手紙を……。そんなのは嫌!!
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