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プロローグ
そうだ、最初からこうするべきだったんだ。
毒瓶を持った手は震えていない。
死ぬ前に怖気づかないか不安だったが、思いの外自分の決意は固かったらしい。
瓶を口元に近づける。
唇にひんやりとした冷たさを感じながら、
自分の生涯を思い返す。
決して幸福とは言えない人生だったかもしれない。
けれど王妃殿下に拾ってもらってから、それまでの人生では考えられないほどの優しさを頂いた。
そして、彼に出会ってからは誰かを愛することを知った。
「私がいなければ、全て丸く収まるわ。」
手に持つ毒瓶を傾け、一気に瓶の中の液体を口に流し込む。
すぐに口から血が吹き出して、地面にぼたぼたと垂れた。
体から力が抜けて、そのまま地面に倒れ込む。
薄くなる意識の中で、バタバタと何人かが走ってくる足音が聞こえた。
瞼を閉じた時、私の名前を呼ぶ彼の声が聞こえたのは幻聴だったのだろうか。
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