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飴【ロイさん×蜂鳥】
少しだけ開いた窓を閉める。
普段の彼からは当然あり得ないと言われそうな顔は、私だけの特権だろう。
つとめて“優しく”言葉を出せば、震える手で指を握りしめてくる。
本当に可愛い人だ。
普段の彼ならば、仮面を被り、他人の運命なんてと転がしては喜んでいるのだが、そのくせ、寂しがりやで怖がりなのだ。
自分が出会う前に、何かときっかけはあったのは分かっているが、見ないようにする。
何かと聞かれたくない方が心地よい時もある。
とはいえ、だ。
何か気晴らししなくては、最低2時間はこの状態だろう。
「ロイ、口開けられますか?」
「……ああ」
小さく開けられた口に飴をいれ、自身の舌をねじ込む。
目を見開いた彼なぞ見ないふりして、二人でただ甘い飴を舌で転がす。
そうだ。どろどろに今の寂しさも怖さも溶かしてしまえばいい。
“あなたが好きな優しいはこういうのでしょう?”
そう植え付けるように、ただキスを交わした。
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