2章 お誘い

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それから、智則の追悼会の具体的な話に進んだ。 服装は普段着で来る感じになり、軽食をどこかでテイクアウトして社長室で食べることになった。 食事を終えた後、龍彦と智則の思い出深い“窓際部署”へ行かない?という話になった。 そこで、やはり沙絵は難色を示した。 「たっちゃんと、智則さんの思い出の場所ってのはわかるよ。だけど、私にとっては智則さんが不倫して、私が家出した時の荷物を置かれた場所よ。昼間に運び出してさ…。たっちゃんも1度会社を辞めてるし…。窓際部署だけはいきたくない」 頑なに窓際部署へは行きたくないと沙絵は訴え続ける。 窓際部署にいかないと、智則を呼び出すことができない。 しかし、それをメールで沙絵に伝えることは難しいことだった 「そう…だよな…。沙絵ちゃんにとっては、まだ許すことはできなんだね」 龍彦は、沙絵の過去のエピソードや感情に寄り添う内容のメッセージを送った。 「許すことができないって…そうね。感情的に許せないっていうか…思い出しちゃうのよね…」 まだ沙絵の中では、何年も前のこととは言え、智則の不倫が原因で別居したことは心の傷として残っているのかもしれない。 龍彦の中では、今回の智則の追悼の会は、沙絵の中に残っている心のシコリやモヤモヤした感情などを解消したいという思いもあった。 また、久の恋愛で疲れ切っている沙絵に少しでも安らぎを与えたいと考えていた。 「じゃあ、窓際部署は当日の気分次第にしよう!部屋の鍵は俺が持っているから、もし入りたくなったらいつでもいってくれ」 「うん、分かった。ありがとうね。日程の調整ができたら連絡するね」
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