3章 追悼の会

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「もうすぐ、会社に着くわよ~」 「智則さん。もうすぐ着くみたい」 沙絵は会社に着くのが待ちきれないのか、バッグからいつも肌身離さず持っている、小さな骨壺を膝に抱えるようにして持った。 「やっと会えるから楽しみだよ」 智則が沙絵に囁くが、やはり沙絵には智則の声は聞こえていなかった。 駐車場に車を停め、会社の玄関まで一緒にいくと、まだかまだかとウロウロしている龍彦がいた。 「たつひこちゃ~ん♪お姫様を連れてきたわよ~」 栄策は沙絵の手を引いて、ゆったりとエスコートして連れてきた。 「たっちゃん、お待たせ!」 龍彦はクールに沙絵にお礼を言った。 「こちらこそ、まだ大変かもしれないのに、きてくれてありがとうな。準備はできてるから」 玄関を開けると、龍彦は社長室に案内した。 智則が生きている時から使っているという社長室に、沙絵ははじめて入った。 「お邪魔しまーす」 高価なソファーやテーブル。床にはふかふかの絨毯が敷かれていた。 大きなデスクにはモニターが2台並べられ、奥にはクローゼットや大きめの冷蔵庫、コーヒーセットまである。 広々として過ごしやすく、豪華な社長室に沙絵は歓声をあげた。 「智則さんって、こんな場所でお仕事してたのね」 沙絵は骨壺をテーブルの中央に置き、社長室内をゆっくりと歩いて見始めた。 「絨毯は俺が入れたんだけどな。足が冷えやすくて…苦笑」 「たっちゃん、冷え性だったの?笑」 意外すぎると言わんばかりに驚く沙絵の顔を見て、龍彦は照れ隠しをするも、栄策がすぐに絨毯のことをバラしてしまった。
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