3章 追悼の会

3/6
前へ
/19ページ
次へ
「今日は、沙絵ちゃんもくるから、足元に気を遣ってくれたのよ~」 恥ずかしそうに「おい!」と龍彦が栄策にツッコミを入れると、沙絵は龍彦の優しさにほっこりした。 「優しいよね、いつもたっちゃんは。ありがとうね」 「どう…いたしまして。…さ、食おうぜ。用意してあるオードブルがあるから」 冷蔵庫からいくつものオードブルが出てきた。 メインはレンジで温めたりして、龍彦と栄策で準備をはじめた。 出てきたオードブルを見て、沙絵は言葉が零れた。 「これ、智則さんが生きてた頃によく買って食べてたわよね~。シャンパンとか飲みながらさ…本当に懐かしいなあ~」 「オードブルとシャンパンは、ワタシがご用意させていただきました♪」 テーブルにオードブルが並べられると、続けてシャンパンらしき瓶とグラスや取り皿などが出てきた。 沙絵が手伝おうとするのを、栄策が優しく制止した。 「今日は、沙絵ちゃんと会長にとって特別な日なのよ♪だから、座ってゆっくり待ってて☆会長のお写真とか、思い出の品とか出して…ね♪」 バッグから、沙絵は智則の遺影と結婚指輪や抗がん剤治療で使っていたバンダナなど、思い出の品を出した。 栄策は沙絵の横に智則が“座っている”ような感じで骨壺と遺影をセットした。 そう、智則が沙絵の横に座れるように。 グラスを置いて、栄策が座ると、龍彦がシャンパンの瓶を見た。 「あれ…?あ、そうだ、今日はノンアルコールのシャンパンだった」 「そうね~、いくら明日会社が休みとは言え、社内で酔っ払っちゃったら大変ね~」 「たしかに笑 たっちゃんと智則さんが酔っ払うと大変だから」 アルコール入りを期待していたが、栄策はこのあと、智則に合わせることを考え、ノンアルコールを準備していたようだ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加