3章 追悼の会

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生ハムを口に入れながら、龍彦はいつも以上にリラックスしていた。 室内履きを脱いで足を組んで、ワイングラスを片手に話を聞いている。 「会長との思い出は仕事か飲みか…女の件ばっかだったような…汗」 栄策と沙絵がクスクスと笑い出すと、龍彦は顔を真っ赤にした。 「笑うなよ!マジで大変だったんだからな~」 社長室で談笑しつつ思い出話に花が咲く。 いつものお堅い社長室ではなく、ほぼパーティー会場のような穏やかな雰囲気に包まれている。 思い出話を進めるうちに、今度は沙絵がしんみりした顔になって喋りだした。 「別居解消して戻ってきたときの智則さんは、病気になってて、あんなに痩せちゃって…根っからの病院嫌いだから、健康診断も1回も受けたことなかったから…。潰瘍ができてガンまで全身にできても治療しないって言った時はびっくりしたわ」 「会長らしいっちゃらしいけどな…。だけど…死ぬの早すぎぜ…」 龍彦は無念さを滲ませ、遺影に目を向けた。 「そうなのよね…感情に任せて別居して、ブランドを立ち上げて今は仕事は充実しているけど…でも…」 グラスを握ったまま俯く沙絵に、栄策が優しく声をかけた。 「どうしたの?やっぱり会長に会いたいの?」 俯いたまま沙絵は「うん」と頷いた。
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