1章 記者会見

4/7
前へ
/19ページ
次へ
「ジャッカルの社員が当日の話し合いの場にいたという事実は全くありません。 当日居合わせたのは、あくまでも水沼沙絵さんが雇った探偵のみでございます」 オロオロしながらの沙絵の会見は、約90分程で終了した。 会見が終わった瞬間にテレビを消し、リモコンをデスクに置いた。 「無事終わったみたいだけど…これからしばらく大変だな…」 龍彦はソファーに両腕を広げ、天井を向いて大きく息を吐いた。 「そぉねぇ〜。わたしたちじゃ、ど~することもできないものね~」 「たしかにな。なんとなく不穏な気配はあったんだよな…だけど、本人がもう周り見えてなかったっていうか…」 悔しさと無念さが、龍彦の中でこみ上げ、右手に拳を作っていた。 龍彦が拳を作るときは、何かに八つ当たりして、怒りや悔しさなどの感情をぶつけた時。 その気持ちに気づいた栄策は、龍彦の隣に座り、優しく拳に手を当て、栄策は少し切なそうに、龍彦にこう言った。 「“恋は盲目”ともいうものねぇ~汗…しばらくはモスアズの対応で、恋愛どころではないかもしれないけどね」 龍彦は栄策の顔を見て、自分の感情が栄策の思いやりで解けていくのを感じたのか、震えあがっていた拳の力が抜けていた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加