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チェルシーを抱きかかえながら走っているというのに、アルバの息はほとんど切れることもなかった。
「あの、もう大丈夫だから」
さっきの恐怖から少しずつ自分を取り戻してきていたチェルシーは、重いでしょと、アルバの胸の辺りを軽く押して降りる合図をした。
「全然軽いよ。もうすぐ街だから」
「や、あの、出入り口の人に見られるの恥ずかしいから降ろして」
「あ、そういうことか」
アルバはチェルシーを降ろした。チェルシーの顔が赤くなっていたが、アルバは気づかなかった様子だった。
チェルシーはありがとうと小声でお礼を言うと、アルバの服の裾を掴んでいた。
「ごめんね、街の中まで掴ませてて」
それを聞いたアルバは察したのか、チェルシーの手を握ってゆっくりと歩き始めた。街まであとちょっとだけど、何か出たら俺がすぐ倒すから安心してねと言ったアルバの手は温かかった。
「あ、そうだ!これ、少しだけど足しにして」
アルバは懐の袋から植物をチェルシーに渡した。それは、道すがら摘んでいたツユクサだった。あ、こんなに!?ありがとうと言ってチェルシーはかごの中に入れた。
そんな会話をしながら歩いていると街の入口まで到着した。
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