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次は、おおよそ酒場に来ることはないであろう、老婆が席についた。
「あの吟遊詩人の言う通りだね。勇者さまってやつなんかの為に我々の暮らしは脅かされていくんだよね……」
ため息をつく老婆にチェルシーはどうされましたかと声をかけた。
「あ、ごめんねお嬢さん。このぬいぐるみなんんだけど、腕が取れてしまってねぇ、孫が大切にしている子なんだよ。どうにかならないかい?」
うーん……
私、冒険者達の簡単な治療に来ているんだけど。裁縫かぁ、あんまり自信ないなぁ…。
「主人さん、ここってソーイングセットってありますか?」
チェルシーは酒場の主人に針と糸を借りて、ぬいぐるみの修繕に勤しんだ。裁縫なんてしない世代のチェルシーだったが、針で何回か自分の指を刺しながらも、なんとか繕うことができた。
できましたと笑顔でぬいぐるみを渡すと、老婆は大喜びしてお金を払って酒場を後にした。こっそりとチェルシーは自分の指に回復魔法をかけていた。
今日はなんか変なお客さんが続くなぁ。まさか自分に魔法をかけることになるなんて。
チェルシーはふふっと笑いながら紅茶をひとくち飲んでいた。
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