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チェルシーは家に戻ると、浴槽にお湯を溜め始めた。中に乾燥していない月桂樹の葉っぱを1枚浮かべて、浄化するのも忘れていなかった。
お風呂に入る前に、明日の売り物のチェックをしているとドアをノックする音がなった。
お店はもう閉店しているから、こんな時間に訪ねてくる人なんてほとんどいないので、誰だろうと思ってのぞき穴を見ると、そこにはとんがり帽子を目深にかぶり、マスクをつけた体格の良い人物が立っていた。
ぱっと見た姿では、年齢はおろか性別も判別不能であった。が、目深に被った帽子の下からチラリと見えた瞳はつぶらで優しい眼差しだった為、チェルシーはドアを開け、その人を中に招き入れた。
「おじゃましまーす」
聞こえてきた声は野太かった。
「こ、こんばんは。なにか御用ですか?」
「あなたチェルシーちゃんね?」
その謎の人物はチェルシーににじり寄り、その顔をじっと見た。思わず、チェルシーは後退りしてしまった。
謎の人物はあらごめんなさいと言って、マスクを取ってニコリと微笑んだ。
「いきなり訪ねてきてごめんなさいね。私は王様に仕える宮廷魔術師のクポックよ。あなた、さっき酒場で即席で呪いを浄化してたわよね?」
「え?ええ…まぁ…先ほど酒場にいらっしゃったんですか?」
「そうよ♪気づかなかったかしら?あなたの真横にいたんだけど」
チェルシーはまったく気づきませんでしたと、大きく首を振った。
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