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「まったく! あいつらやり方が汚なかったな」
敏が憎々し気に話し出す。
「最初から狙いが紅花だったとは。しかし四神様がそんなヤツの願いを叶えるはずもないわい。永遠の命など。寿命があってこそ人は美しいのじゃよ」
「おばば様、ときどきすげえ良い事言うよなあ」
「なんじゃ、宇軒は今頃わかったのか」
「はははっ。ばば様にはかなわねえぜ」
「ところで紅花はもうここには居られないの?」
「ああ。それが約束だったのじゃよ。スゥシェン国の王妃様とのな」
争いの中、国の存亡が見えてきた事を悟った王妃は四神の皇女をキャラバンに託した。皇女として目覚め、自分の意思をもつまではと。そしてその後代替わりした四神の一人と出会うのだが……。
「まぁったく、フェイがこんなにも奥手とはなあ。もっと早くくっつかねえかとやきもきしたぜ」
「まだ神聖化前じゃったからな」
「いや、あれは性格じゃねえかい? それに四神の誰と契るかを決めるのは花嫁である紅花だったからな。あいつもいつまでもウブでさ。朱雀の地であるこの地に残るって言い出したときは焦ったさ。それはこの地の四神を選ぶという事になるからな。まあ本人はわかってなかったみたいだけどよ」
「なんにせよ。あるべきところに落ち着いたって感じだよね。これからは僕が紅花やフェイのようにキャラバンを守るよ。敏、僕に……いや、俺に戦術やカヤードの操り方を教えてくれ」
「ははは。なんだよ。宇軒が急に男になりやがったな。よし、今日から鍛えてやるから覚悟しろよ」
◇◆◇
紅花とフェイは真っ白な空間に居た。朱雀神が詫びだと禊の場所に連れてきてくれたのだ。
「紅花。すまない。もっと早くに脱出できたんだが、お前がいるキャラバンに迷惑をかけると思うと動けなかった。まだ俺も一緒に旅にでたかったからな」
「うん。わかってるわ。フェイが無事でいてくれてよかった」
「紅花……あいつに何かされなかったか?」
「あのね、私、マーキングされてるって言われたんだ」
「うっ……それは。紅花は俺のモノだと印をつけておいたんだ」
「いつ? ぁ、まさかキスしたのって」
「そうだ。あの時は紅花があまりにも可愛すぎたからマークしたんだ」
「なによそれ……私は可愛くなんかないわよ。フェイの方が可愛いのに」
「俺を可愛いなんて言うのはお前くらいだぞ」
「ふふ。私たちお互いが可愛くって仕方がないんだね」
「そ、そうか可愛くて仕方がないと思ってくれてるのか」
「ふふ。あの……フェイ。私は四神の花嫁なの?」
「紅花は俺の花嫁だ。俺は……龍人なんだよ」
「フェイが? 竜なの? 火竜や水竜の仲間なの?」
「飛竜の方が近いかな。神聖化出来たら青龍になる予定だ」
「朱雀が、花嫁と契ると神聖化するって……」
「お……おう」
「いいよ。私はフェイだったら、なにされてもいい」
「……紅花。自分が何を言ってるのかわかってるのか?」
「うん。フェイが良いの。フェイとならキスしたいし、抱きしめてもらいたいし、胸が熱くなってドキドキして。私ね、フェイの事が……すき」
「お、俺は紅花が好きだ。俺の花嫁になってくれ!」
「うん。花嫁にして!」
フェイが紅花を抱き寄せる。紅花はそのまま身を任せた。重なり合う唇が熱い。すぐに手の甲に梵字が現れる。愛おしそうにフェイが撫でる。
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