本編

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 私の胸の中で決意が再び固まる。絵をじっくりと見つめながら、その制作者に迫る手がかりを探し出す。AI絵師の作品には、最も微細な部分にだけ現れる特有のパターンがある。それを見抜くことができるのは、長年このネットの海に潜り続けてきた私のような者だけだ。  まず、私はその絵の投稿者のプロフィールを確認する。彼の名前は「星夢(ほしゆめ)」と名乗っている。活動履歴を見ると、ここ一年で急速に人気を博しており、フォロワー数といい、作品の評価といい、異常なほどの急成長を遂げている。これほど急激に技術が向上することは、人間にはまずありえない。  さらに彼の過去の作品と現在の作品を比べることで、技術の飛躍的進化があることがわかる。しかし、その進化の過程には一貫性が欠如している。成長に伴う試行錯誤やスタイルの変遷が見られない。直感が告げる――この「星夢」はAI絵師だ、と。  私は証拠を集めるために彼の絵の一つ一つを詳しく分析し始める。色使いや線の描き方、さらには細部に目を凝らすと、微妙なパターンが見えてくる。ここだ、これが決め手になる。私はそのパターンを見つけると、確信をもってデータを保存する。そのパターンは、過去に見た他のAI絵師の作品と一致するものだった。  集めた証拠を持って、私はネット掲示板の匿名掲示板に戻り、その詳細を投稿する。この掲示板はAI絵師の排除を求める人々が集まる場所だ。私の投稿はすぐに反響を呼び、多くのユーザーが「星夢」の絵を分析し始める。掲示板には次々と証拠が集まり、議論は熱を帯びていく。最終的に、彼がAI絵師であることが公然と認識されるまでに至った。  その夜、私は一息ついてほうじ茶を一口飲む。勝った感覚は一瞬だけ、すぐにまた次の「狩り」を思い出す。この無限のネットの海で、偽りの天才たちを暴く使命が私にはあるのだ。もっとも、こうしてAI絵師を暴き出すことが果たして正義なのか、それとも単なる追い詰めの愉悦なのか、考えることもある。  しかしそれでも、私は再びネットの海へと潜っていく。もう一人の存在、「人間絵師」の真実を守るために。暗闇の中で輝く一筋の光芒にすがりつつ、巡る夜が明けることを待たずに。
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