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「うっ……ばぁちゃ……婆ちゃんッ、ごめ……」
「有間くーん、お取り込み中ごめんよ~」
懐かしさに浸っている最中のことだった。
背後から、此処まで連れてきてくれた恩人の声に我に還る。
しかも、感傷浸っている中での飄々とした様子と言葉。
本人は悪気無いと思うが……。
流石の俺でも、今のはイラッとしてしまった。小説挿絵の仕事をくれた恩人だとしてもだ。
後ろにいる原因へ振り返ると、笑顔のまま。
余計にストレスが、グンと上がる。
「……あの、すみません。宇宙さ……」
「前を向いてくれる?」
急に真顔になった相手。
逆らっていけないと察し、言う通りに前を向くと、視界は、身内の墓石でいっぱいになる。
そんな中、俺の背中に手を当てられている熱と感触が広がっていく。
共にいつもと違う重苦しい低い声色で、言葉を続け始める。
「お墓というのは簡単に言えば、身内専用の〈あの世とこの世の通行出入り口〉だ。」
「コレは、一部しか知らない話しだからね。
世間では、お骨が入れる為の墓石なってるけど。
さっきも言ったように、〈君は本来の場所に戻らないといけないんだよ〉。ーーだから、此処に連れてきた。
生者が長く居すわると、現世に繋がっている魂の鎖は泡になって解けてしまうからね」
「そして、黒アゲハは〈先祖の魂〉とも言われている。君言われただろう……?『早く行かなくて良いのか?』ってさ」
アレは、ーー【警告】だったんだよ。
「んでもって、僕はソレのお手伝いってこと♪ほらぁ、鎖がもう一つしか残ってないよ。だから、ーー早く帰りなよ」
その言葉を最後に。
背中を強く押されしまった。前のめりになり、目の前の墓石に当たった身体は吸い込まれるように溶け込んでいった。
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