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「ーー先生ッ、有馬さんの意識が戻りました!」
ふわりと鼻腔を擽る薬品の香りと、切迫詰まった女性の声。
不思議に思い、目を開けると白い天井と自身の左腕に繋がっている点滴の管。視点を変えると液体が入った点滴袋がぶら下がっている。
「……あの、俺なんで此処に?」
喉が乾燥して、やっと出せる細い声量で聞くと看護師がこちらに耳を傾ける。
「有馬さん、良かったですね〜。貴方、自宅内で倒れて居たんですよ?
発見してくれた、大家さんに感謝ですね。
あと診断は、睡眠不足、栄養失調などによる過労という話しです」
「え……過労ですか?」
「ええ、そうですよ。過労死になりかけていたというのが正確ですけど。
有馬さん……、確認ですけど年に一回行ってますか?」
「えと……?」
「ーー 健康診断ですよッ!!」
突然の怒涛の声。
この個室内に反響し、響き渡り俺の鼓膜が拒絶反応を起こす。
「血糖値、血圧など健康範囲超えてましたよ。退院できたら、年に一回でも良いので受けて下さいね!仕事が忙しても。
会社というのは、他人の体調に責任取ってくれませんからね……、絶対ですよッ!!」
「あ、……はい」
これが、三年前にあったとある夏の話である。
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