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「じゃあ、俺、行くわ」
冷め切ったコーヒーを飲み干して彼が言った。椅子から立ち上がって伝票を持って出て行く。
私は、彼が去って行く後姿も見ずに俯いたまま、ひと口飲んだだけで冷めてしまった紅茶のカップのミントンの柄がぼやけていくのを眺めていた。
何がいけなかったのか私には理解出来ない。
映画だって彼が観たいって言うアクション物を興味もないのに付き合って観たのに。
食事もイタリアンの美味しい店を見つけたからって彼が大好きだって言ったピザを注文して私には好みじゃなかったのに美味しいって食べた。
重い女だって思われたくなくて、結婚も匂わせたこともなかったし。
ましてや家族に会って欲しいなんて言わなかった。
負担にならないように両親が会社を経営していることも、女だけの二人姉妹だから婿になってくれた男に会社を任せたいと父が考えていることも……。
ただ一緒に居たかったのに……。
冷めた紅茶を飲み干してひとりで店を出た。
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