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Act1.再建  西暦20xx年、日本──  凶悪犯罪は増加の一途をたどり、犯罪者の低年齢化も進んで、都市圏・地方を問わず治安の維持が困難となった。そうなってようやく、刑法と少年法が改正されることになった。 1.少年法において、13~17歳が「特別少年」と定義され、未成年ではあるが、18・19歳の「特定少年」と同様に検察官送致(逆送)の対象となった。 2.刑法において、犯罪毎に適用される罰則が全面的に見直され、改正前より重い罰則が適用されるようになった。特に再犯率の高い性犯罪は極刑まで含めかなりの罰則強化となった。 3.刑法において、いじめが犯罪として定義された。これまで傷害罪や強要罪、恐喝罪等に該当するものを対応してきたが、明確に犯罪と定義することで警察が介入しやすい環境を整えた。 4.刑法において、死刑が廃止となり、代わりに社会奉仕刑が導入された。社会奉仕刑の受刑者は首都圏に新設された社会奉仕施設に送られて、戸籍を変えられ、施設内で最長終身で社会奉仕活動に従事する。奉仕活動の内容は非公開である。  一見すると、刑罰を重くする代わりに死刑を廃止するという、政治的な右派・左派のバランスをとった結果であり、改正当初より妥協の産物と揶揄されてきた。  その一方で、改正刑法の内容から社会奉仕刑は死刑の代わりに導入された極刑であるにも関わらず、既存の懲役刑と具体的に何が違うのか、どう運用されるのかが継続検討のまま、新制度は開始されてしまった。  数年後──要塞の如くそびえ立つ社会奉仕施設の中で、受刑者が何をしているのかを知るものはいない。まだ刑期を終えた受刑者がいないこともあるが、外部との情報連携が禁止されており、過酷な重労働を強要されているのか、命がけの危険な任務を負わされているのか、はたまた人体実験の被験者をさせられているのか、都市伝説の格好の材料と化していた。
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