社長の一日

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 ビルを後にした俺は今、アップテンポかつ重低音が心地よい音楽をカーオーディオで鳴らしながら、道路をかっ飛ばしている。  この時間帯は、そんなに交通量は多くない。きらきらとした夜景がきれいだ。  夜景を堪能しながら走り続けていると、T字路に差し掛かったので、ここを右折。後はまっすぐ走り続ければ、自宅マンションがある町に辿(たど)り着く。  鼻歌交じりに車を運転していると―― 「!!」  急にハンドルを左の方に取られた。  俺は慌てて右の方に回し、車の向きを元に戻した。 「馬鹿な! なんでハンドルを取られたんだ? この車はスポーツカーで、しかも、かなり高かった奴だぞ! 安定性抜群なはずだ!」  俺は、今起きたことが、にわかには信じられなかった。  どこかにガタが来ているのだろうか?  でも、購入してから、そんなに年月が経っているわけではないし…… 「はっ!」  もしかしたら、昨日の事故のせいか?  きっとそうだ!  後で見てもらおう。  そう思っていたが…… 「なっ!」  ハンドルが急に左方向に回り始めた。  このまま左折するとガードレールにぶち当たるので、俺は慌てて右方向に回そうとする。  だが、できない。左方向に回る力が強すぎるのだ。 「うわっ!!!」  ガードレールにぶち当たった。  かと思ったら、ガードレールは、あっさりと突き破られた。大きなマフラー音と共に。  車が川原の上に落ちると、ハンドルの回転が止まった。  俺は車道に戻るために、ハンドルを回そうとしたが、回らない。まるで、何かで固定されているかのようだ。  車は動き続けている。  川原のでこぼこから伝わる振動が、ケツに刺激を与え続ける。  向かう先には川がある。それも大きな川が! 「止まれ! 止まれ!」  ブレーキを何回も踏んだが、止まらない。 「ああ……!」  ついに車は川に突入した。
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