1章

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美香は離れていく中年男性の背中を何度も 追おうと足を踏み出しては 追いかけてはいけない気がして止まる 3車両分の距離には居る 中年男性も電車に乗るのだろう 再び電車がホームに入ってきた 近寄るのを辞め電車に乗り込む 美香は 『あの男性は何処で降りるのだろう?』 そんなことを考えていた。 しばらく電車に揺られ自分の降りる駅に着く 電車を降り男性が乗った車両の方を見る 『…居るわけないよね…』 降りた人数は多いわけではないが その中の一人をピンポイントで見つけるのは 難しいだろう、やはり見当たらない 諦めて改札に向かう美香 『もう一度、逢えたら、もっとちゃんと お礼を言おう…』 そう考えながら改札を抜けた 夜でもそんなに暗くない道を10分も歩けば 自室に着く、ゆっくり歩き出した美香 後ろを振り向くことは無かった… 先程の電車、ドアが閉まる寸前に 一人の男性が慌てて降りていた。 そう先程の中年男性だ。 奇しくも同じ駅で降りたのだった。
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